入社した社員をしっかりとした戦力にすべく、色々な教育をするのは当然です。教育の中には、外部の訓練機関に行かせることもあるでしょう。そうした経営者の努力にも関わらず、手塩にかけて育てた社員が辞めてしまうのは残念なことです。教育にかけたお金を返せ!と思うこともあるでしょう。もちろん、そんなことできませんが。
では、社員のほうから勉強したいのでそのためお金を貸してほしいと言われた場合はどうか。実際に資格取得や留学などの学費を貸し付ける制度を持つ会社はあります。問題は資格取得や留学が終わった後に、すぐに辞められてしまう場合です。多くの場合、勉強の目的が達せられた後、一定期間、継続して勤務すれば返還義務を免除する、逆に早期に辞めてしまったらお金を返してもらう、という条件を附して費用を貸し付けていると思います。これら条件が労基法でいうところの「賠償予定の禁止」にあたるか、という問題です。
結論から言えば、社員が勉強したいという内容がどれほど会社の業務に関連するのかや、社員の自主性がどれくらいあったのか(会社から行け、と言われていないか)などを要素に判断されます。例えば社員が仕事とあまり関係ない事の勉強をしたいと自らすすんでした場合の学費の貸付は、本来は本人負担であるはずなので早期に辞めてしまった時は返還は認められやすい、ということになります。
なぜ一定期間の継続勤務での返還義務の免除や早期退職したら返還する、ということが問題になるかと言えば、労働者の職業(退職)の自由を阻害する可能性があるからです。職業の自由は憲法で保障されていますので、それを侵さないかどうかを慎重に考える必要があるのです。