昔の日本の軍隊には、名将と呼ばれる人が多くいますが、その中に乃木希典がいます。この方は、日露戦争で旅順要塞を戦死者1万5千人という大きな犠牲を払い、約5か月かけて攻略しました。名将や軍神とも呼ばれていますね。
要塞攻略で言うと、第一次世界大戦でドイツの青島要塞を攻略した神尾光臣という人物がいます。こちらの方は乃木と比べてあまり有名とは言えない方です。神尾は青島要塞を戦死者500名程度で、約1~2週間という短期間で完璧に攻略した人物です。
さてこれらの人物ですが、戦死者や攻略にかかった期間をみればどちらが優秀と評価されますか?普通に考えれば神尾ではないでしょうか。もちろん、二人が置かれた状況は全く違うので、犠牲や期間だけで優劣は考えられません。日露戦争の乃木は、ロシア軍の状況などから旅順をどうしても早くに落とさなければならなかったので、歩兵による強行突撃作戦を取らざるを得なかった。これに対し神尾の方は、ドイツ本国から青島に援軍が来ることは無いので、じっくり準備して満を持して攻撃できたという状況でした。
評価の優劣に話を戻すと、きわめて犠牲者を少なくして結果を出した神尾がもう少し有名になっていてもおかしくはないと思うのですが、現実はそうなっていません。乃木の方が明らかに有名です。言い換えれば日本人は乃木を高く評価していると言えるでしょう。
なぜこれだけ差が出るのか。ひょっとして犠牲の大小が大きく関わっているのかもしれません。要は大きな苦労をして得た結果の方が、少ない苦労で得た結果より評価されるという心理が日本人の中にあるということではないでしょうか。ここのあたりを鑑みると、残業をたくさんする社員の方が所定労働時間内にしっかり仕事を終わらせる社員より頑張っていると評価さてしまう日本の会社文化に似ているように思います。残業=社員の頑張りと評価されてしまうように。
大変な苦労をして大きな結果を得る。漫画や小説では面白いといえることでも、現実では入念にしっかり準備してトラブルなく計画通りに終える方が良いに決まっています。当たり前のことをもっと仕事で意識すべきではないでしょうか。