労働者の中には、労働時間等の規制の適用を受けない人もいます。労基法41条に該当する人がそれにあたります。該当すれば、労基法に定める労働時間、休憩、休日に関する定めが適用されなくなります。(ただし、深夜労働に対する割増賃金(25%)の支払いや、年次有給休暇は適用されます)。労働問題でよく出てくるのは、管理監督者に該当するかどうかです。
1,管理監督者とは
管理監督者とは、労務上経営者と同様に扱われる責任のある立場にある者を指します。経営者と同様の立場になると、自らの裁量で時間管理できるし、労基時間等の規制の枠を超えて活動することがどうしても求められます。そのため、労基法41条が適用されます。
2,残業代、休日手当の支払い
管理監督者に該当すると労働時間規制がなくなりますので、残業や休日出勤を考えなくてよくなります。こうなると残業代や休日出勤に関する手当の支払いも必要なくなります。この残業代等を支払わなくてもよいという点が曲者で、このことを悪用しているのが所謂「名ばかり管理職」です。
3,裁判例
管理監督者性で争われた裁判で「神代学園ミューズ音楽院事件(東京高裁平成17.3.30判決)」があります。事件概要は学園は賃金、手当の見直しを行い、役職者には時間外手当は支給されなくなりました。見直し前は時間外労働等の実績により、時間外手当が支払われていました。そこで従業員が、管理監督者該当性を否定して、 未払の時間外手当(いわゆる残業代)の支払いを求めたものです。
判決では次の理由で原告らの請求が認められました。
・経営において、重要な職務上の権限を付与されているとは認められないこと
・基本給と役職手当だけでは、厳格な労働時間の規制をしなくてもその保護に欠けるところがないといえるほどの優遇措置が講じられているとは認められないこと
・原告らはタイムカードにより時間管理されており、他の従業員と変わらないこと
4、考察
この判決では、裁判所として管理監督者該当要件を示したことでも重要です。具体的には次のような内容です。
①経営者と一体となって重要な職責を負う役職者であること
②始業・終業時刻や休日を自律的に決定できること(遅刻、早退などで控除されない、自由に出退勤できるなど)
③役職に相応しい賃金等の処遇を受けていること
この要件を見れば分かるように、本当に管理監督者に該当するにはかなりハードルが高いと言えるでしょう。とくに従業員数の少ない中小企業では要件に該当する従業員はほとんどいないでしょう。しかし、現状を無視して管理職という名前だけ与えてサービス残業を強制する「名ばかり管理職」問題が横行しているのが日本の実態です。
5. 実務対応
企業として名ばかり管理職問題に適切に対応するため、以下のステップで進めましょう。
(1) 現状の確認
現在の管理職が管理監督者の要件を満たしているかチェックします。
・経営方針の決定や人事権に関与しているか
・出退勤を自由に決められるか(タイムカード管理されていないか)
・一般社員と比較して十分に優遇された待遇か(例えば一般社員が平均的な残業をしても、到底追いつけないほどの年収になっているかなど)
(2) 是正措置
要件を満たしていない場合は、非管理職に戻して残業代を支払うか、実質的な権限と裁量を与えて真の管理職にするかを選択します。過去の未払い残業代がある場合は、自主的に精算することでリスクを軽減できます。
(3) 予防策
管理職昇格時に要件を慎重に判断し、定期的に実態確認する仕組みを作りましょう。就業規則に管理監督者の定義を明記しておくことも重要です。