「HTLV-1 或る微生物学研究者の日常」 岬 真之著 Amazonのクリンドル出版で発売中

 

 主人公は大学の微生物学教室の助教授であり感染免疫学と細菌の分子生物学が専門である。

 この小説では、35年前の当時の主人公の研究生活の日常を描くとともに、主人公の研究内容についても文系の読者にも理解が出来るように、かなり詳しい学問的な説明を加えている。主人公の教室の川野助手との一連の会話は、医学部での研究生活の実態を知らない読者にとってはかなり興味深いものであろう。

 また、進一の友人である同じ大学の臨床医学教室の中田と言う講師の、成人T細胞白血病の原因ウイルスであるHTLV-1の遺伝子に変異を導入して、ウイルス感染T細胞の癌化を抑えようとする研究の経緯を当時の学問的な知見に忠実に記述している。

 中田は進一の忠告に従って、最初のうちはマウスの白血病ウイルスを研究対象にしていたのだが、或る時点から急にHTLV-1を研究対象に定め、進一の制止を振り切るようにして強引にHTLV-1の遺伝子改変研究に舵を切って行く。そして、中田の研究は或る理由で中止に追い込まれるのだが、その結末はここでは明かさないでおく。