量子もつれは恋の予感
主人公は28歳の男子で大学の助教をしている。或る日、主人公は高速道路の山越えで交通事故を起こし対向車と正面衝突をしてしまい、心肺停止に陥り臨死体験を経験する羽目になった。三途の川を渡ろうとした時に、突然主人公の意識が極微にまで押し潰されクォークと思われる量子と合体してしまった。
気が付くと、主人公の周りには人間の意識を持った量子が飛び回っていた。或る時、主人公は量子同士の重ね合わせ現象を利用して女性と思われる意識体と交信することに成功したが、その女性は主人公が正面衝突をした車を運転していた人だった。その後、主人公は量子力学研究者の意識体との交信にも成功したが、その研究者は死後の意識の量子化は人間に限られた稀な現象であり量子化した意識体の寿命は非常に短いと言っていた。主人公は、その人から彼女と一緒に宇宙空間を瞬間移動する方法を学んだ。心の交流が進むにつれて二人の間に恋心が芽生えて行った。
そして二人は手に手を取って宇宙を巡る旅に出たのである。二人は色々な経験を重ね互いへの愛を深めつつ宇宙の果てに向けて旅を続けた。二人はついに宇宙空間と絶対的な「無」の世界との境界面に辿り着いたが、その光景は名状しがたいものだった。球形の宇宙の縁と「無」の世界との間の百億光年の空間には天体は一つもなく、「無」の世界との境界面からは青白いコロナが放射されていた。その時、二人の恋は愛に昇華し永遠のものとなった。
その後、二人の量子が「無」の世界との境界面に触れたため、二人の意識体は瞬時に消滅したのだが、不思議な力が働き、二人は別々の病院の救急処置室で蘇生することになった。エピローグには、蘇生後の二人の入院生活、社会復帰の様子、そうした日々の触れ合いを介しての二人の心情の変化について語られるが、全編を通して若い女性にも受け入れられそうな魅力のある恋の物語になっている。結末は、二人が普通の恋をして結婚して幸せな家庭を築いて行くと言うもので、快い読後感の小説になっている。

