人事部29年の社労士 吉崎です。
一億総活躍社会に関して、「同一労働同一賃金」を目指すという政府の方針があり、専門家による検討会立ち上げなど具体案作りに動き出しています。
同一労働同一賃金と聞くと、同じ仕事をしていれば同じ賃金を支払われるべきだ、というふうに考えることがあります。しかし、そんな単純なことではありません。
戦後日本の賃金は、勤続年数に応じて上がる年功賃金制度が定着しています。裁判例でも「我が国においては、未だ、長期雇用が予定されている労働者と短期雇用が予定されている有期雇用労働者との間に、単純に同一労働同一賃金原則が適用されるとすることが公の秩序になっているとは言えない」とされて、同一労働同一賃金の原則適用は否定されています。
これに対して、ヨーロッパ諸国では、職務評価制度が確立しており、例えばイギリスでは、同じ職種・職務の場合、地域が同じであれば会社が違っても同じ賃金となっています。
ヨーロッパの事情を日本に輸入しようとしているのが今の同一労働同一賃金の議論の方向性のようです。日本では職務給は定着しておらず、職能給が中心であり、企業別の賃金水準となっています。しかし厚生労働省の同一労働同一賃金に関する検討会では、労働法や労働問題の専門家ではない委員の発言によって、何とか職務給を定着させようとしているように聞こえます。この議論については、継続的にチェックが必要だと思います。
この議論に関して、企業の実務家が忘れてはならないことは、賃金は労働への報酬であり、その「労働の価値」によって決めるべきだということ。職務給の定着や職種横断的な賃金水準ができるかどうかは疑問ですが、少なくとも同じ社内で同一価値労働があれば、賃金格差は認められなくなってきます。
今の議論の出発点は正規雇用者と非正規雇用者との賃金格差問題です。これに関しては国民感情も固まった感があり、もはや後戻りはできないでしょう。具体的に、何をもって同一の労働価値とするかがポイントで、社内における職務を分析し正規、非正規という雇用形態にかかわらず、同じ職務なのであれば、同じ賃金水準にすることが求められます。
例えば、パート雇用者と社員が同じ職場で、同じ仕事をしている場合(飲食サービス、電話のオペレーションセンターなど)は、賃金水準が違えば違う理由の根拠が必要になります。社員だからパートだからということだけでは理由になりません。
現在のパート労働法でも、職務内容が同一であればパート雇用者であることを理由にして賃金差別をすることは禁止されており、さらに明確な禁止事項が法定化される議論も進んでいます。
一般の企業では、まだまだ「自分たちには関係ない」という感覚の方が多いと思いますが、目前に迫った重要な課題として早めに対応していただくことが必要だと思います。
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