厚生労働省の調査によると、07年度で製造業に派遣された労働者の数は約46万人。昨年10月から本年3月までに失職するとみられる非正規労働者8万5000人のうち、製造業が96%を占めるという。
だから「製造業は禁止」となるわけだが、この理屈はどうも“臭いものにはフタ”の感じが強い。よく考えてみると、この問題の重要なポイントは別のところにあるような気がする。(NIKKEI NET 池内 正人)
確かに、景気が順調な時は、労使ともにメリットのある雇用の形態だったと思います。この問題のポイントの一つには『法律の不備と、法律が守られていない現実』にあると、池内正人さんは言っています。
派遣の打ち切りをしている企業は実際に法令に違反しているわけではないのです。労働者派遣法では、中途解雇は違反ではないのです。昨年春に施行された、労働契約法の17条に『やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない』という解雇の定めがありますが、これは一般的に正規労働者が対象とされます。
また、派遣会社が派遣労働者を、雇用保険に加入させていないという違反行為も池内さんは問題ポイントの一つにあげています。雇用保険に加入していない場合には、失業給付はもらえません。
派遣という雇用形態が「労働者+派遣元+派遣先」の3者から成り立っている点と、「労働者<派遣元<派遣先」という力関係の差があるという点に問題があるのだと思います。この力関係は製造業派遣に顕著に現れています。中には「労働者>派遣元>派遣先」という形もあります。これは、専門的な技術職の派遣に多くみられます。労働基準法では、派遣労働者も当然守られるようにルールが定められているのですが、使用者(派遣先と派遣元)が責任をなすりあっているような、製造業派遣では、法律通りにはいかないということです。
派遣という働き方を選ぶ労働者の側にも、様々な理由があるでしょう。しかし、現行の派遣の仕組み、法律の状況では立場が弱く守られないという不安定な雇用形態であることを認識しなければなりませんね。