与論島は、珊瑚礁のリーフで囲まれていて
リーフの内と外では、水深が数十メートルも
違います。

リーフの内側では、満潮時でも水深10m
くらいですが、リーフの外側では海水が藍色
のような濃い青で、海の底が見えません。
あまりに底が見えず、また吸い込まれる
ような綺麗なブルーに恐怖すら感じます。

コーチは、このリーフの外に一人で出て
九死に一生の思いをしたことがあります。

ちょっと波の高い日でしたが、海辺から
リーフまで200mもない場所で、リーフを
越えてシュノーケリングをしていました。

ふと海底をみると、波の打寄せとともに
海底に白い泡が、渦巻くのが見えたので
これはヤバイかも、と引き返そうとしましたが
引き波の強さで、体が引き戻されフィンで
フルストロークのキックをしても、全く前に
進まないのです。

焦りました
必死にキックしても後ずさりするのが海底を見てわかりました。
もがくのをあきらめた時でした。
家族のことや、これまでのシーンが走馬灯の
ように頭の中をめぐってきたのです。

ここで終りか

その時、足もとの珊瑚を見て、これにしがみ
ついたら、引き波を耐えられるのではないかと
思い始めたのです。

それから、寄せ波の時は、波にのって前進し
引き波の時は、珊瑚にしがみついて戻される
のをこらえ、次の寄せ波を待ち、また進むを
繰り返し、どうにかして岸辺までたどりつき
そのまま珊瑚の砂浜の上に倒れこみました。

その夜は、海底の泡の渦巻き音が耳につき、
助かった脱力感とはうらはらに、寝付けない夜
になりました。

おおげさかもしれませんが、死を覚悟した瞬間
それまでの心の焦りや、必死のもがきがなくなり
身も心も穏やかになったのは、なんだったのでしょう

今思えば、これも諸行無常の一瞬だったのかも
知れませんね。