「誤解されるくらいなら来ない!」と聞いた時に、僕はとてつもなく大きな後悔に襲われた。そうか。僕が『誤解』していたんだ…
僕はジミニヒョンが去った方向をぼんやり見つめながら立ち尽くした。
スーツ着ていた…ジミニヒョン…
見たときすごく大人に見えて…
体育館で練習しているとき、やってくるジミニヒョンを見て胸が高鳴った。濃紺のスーツはすらりとしたジミニヒョンによく似合っていた。いつもエプロン姿でお店に立っているときはほわんとした雰囲気なのに、今日はオフィスビルでデスクワークでもしていそうな大人の男の雰囲気だった。
僕の恋人って…
大人だったんだ…
だけど、ムホに話しかけられた瞬間に、ジミニヒョンの雰囲気はやわらいだ。それはムホと話をしていくにつれどんどん顕著になって、ムホが頬に触れたときには、ジミニヒョンの顔が真っ赤になっているのがわかった。
ムホの前であんな可愛くなるなんて…
それを見たくないから…
ムホとは話さないでって言ったのに…
すぐに飛んでいって引き剥がしたかったけれど、練習がなかなか終わらなかったのだ。そして、いざ近づいて見ると、ムホが「また明日」と言うのが聞こえて、ムカッとしてしまった。
ジミニヒョン、「誤解」だって言ってたな…
そうだ、ジミニヒョン何も悪くないのに、僕が勝手に妬きもちやいちゃって…
早く謝らなきゃ、と思ったものの、スマホは部室だ。その時、チス先輩が練習再開の号令をかけて、僕はやむなく体育館の中に戻った。
Side JM
ジョングクに話したいことあったのに…
閉店作業の後、僕は厨房で、授賞式でもらった小さな記念品と表彰状を見ながらため息をついた。高校からお店に帰った後、閉店までずっとお店にいたから、明日差入れに持っていこうと思っていたお餅が厨房の作業台のかたわらに作りかけのまま放ってあった。
明日、どうしようかな…
「見にこなくていいです」と言われたときのジョングクの声の冷たさを思い出して、僕はまた、ため息をついた。作りかけで置いておくわけにはいかないから、ひとまずお餅は作っておくことにして、作業に取り掛かる。ひとつひとつ丁寧に、形を整えていると、波立っていた心がだんだんと落ち着いてきた。