大阪芸大には天の川通りと言う名のメインストリートがある。
なぜ天の川かは知らないが、昼間は人通りの絶えないこの通りも今は朝の5時半、人通りは全くない。
「ここにしよか」石本は通りを見下ろすレンガの広場に立ち言った。
彼の頭にはココにくるまでに、おおよその構想は出来ていたらしく、てきぱきと指示を開始した。
「オレがこの通りを、東から西へと駆け抜けるから、それをまず撮って欲しい。その後、城田にカメラを向け最後のオチをつける、まあ、これを何にするかは任せるわ」と石本は城田と僕を交互に見ながら言った。
「とりあえず、石本が駆け抜けるんやったら、オレはここから撮るわ」と僕はレンガと通りを挟んで向かいにある場所から取ることを伝えた。
「うん、せやな。そこでエエ思うわ」と石本。
「ほんで、オレがどうするかやなあ」と城田がレンガ広場に立つ街灯の下のゴミ箱に入りながら、呟いた。
ズボ。城田はすっぽりとゴミ箱の中に収まった。
「これで、イコか」と城田。
「ちょっと、待って!カメラ覗いたら、城田とゴミ箱のアミアミがカブってもうて、なんやよう分からんで」と僕は慌てて言った。
「まじで!?」と城田が『ゴッ』と言わせてゴミ箱を倒して横になった状態から出てきた。
「うん、ほら」と僕は試しに回したフィルムを見せた。
「ホンマやなあ、ゴミ箱から出てくるのはまるで、貞子やなあ」と城田は真剣な表情で街灯を見ていた。
「昇ろうか」と城田は呟いた。
「どこに?街灯に?」と僕。
「うん、ちょっと行ってくるわ」と城田はもう歩き出していた。
高さ2M少しの街灯に、ひょいと城田はつかまった。
「よし、これで、いこ」と城田は言った。
「おう、ほならオレ向こうから走ってくるから、サイ撮ってみて」と石本。
「分かった」とカメラをチェックしながら言った。
「いくで!」と石本が叫んだ。
バッ!と僕が手を上げた間無しで石本が叫びながら走ってきた。
「のけ!のけ!のけ!のけ!のけー!!!!」
誰もいない天の川通りに石本の声が轟く。
石本が走り抜けた、その後に城田にカメラを向ける。城田は街灯にコアラのようにしがみつき言った。
「なんだこりゃ」カット!
3人の確認が始まった。
”のけのけのけ・・・・、なんだこりゃ”
「なんか、足らんなあ」と石本。
「なんやろ?」と城田。
「やっぱり脱ぐか」と石本。
「せやな」と城田。
二人とも定位置に赴き、スルスルと脱ぐ、初春の朝に全裸は少々辛い。
「いくでー」と石本、股間に手をあてているもののフルネイキッドである。
城田もマッパでぶら下がる。
石本が走り出した!雄たけびを上げる。
「のけのけのけのけ!!!!」
スピードがあがる。
ビデオはその様を克明に追う。
フレームの右端から、カメラに近づき左へ駆け抜けていく。
突如、石本は全裸のまま大きく股を開いて倒れこんだ。
カパっと開いた股間と尻が悲しい。
その瞬間カメラは正面の街灯へ。
「エライこっちゃ」
城田コアラははっきりと、少し高めの声で言った。
本当にえらいこっちゃである。
撮影は終了した。
・・・・・今、あのビデオはどこにあるのだろうか?

