七夕の夜の…10 | 信義〜♪ 私の中の3巻…(シンイ・二次小説)

信義〜♪ 私の中の3巻…(シンイ・二次小説)

シンイの二次小説を書かせて頂いております。
読み終わった後に、心がほんわかあったかくなるような、物語を綴っていきたいです。

辺りは、大変な混乱が巻き起こっていた。

 

わぁっ、わぁっと言う、怒号と言うよりは悲鳴に近い叫び声が倭寇から一斉に起こり、月を見上げながら逃げ惑っている!

 

船へ登ろうとする者…海へと入ろうとする者…徐々に欠けてくる月を恐れ、逃れようと闇雲に走り回っていた。

 

忠勇衛の中にも、同様に恐れおののく者も居たが…健気にもその場を動かず、剣を振りおろし、ある者は長槍を繰り出し…血しぶきをその身に浴びた…その様は倭寇を全滅させ、掃討しつくそうとしているようだった。

 

迂達赤に至っては、戦の最中は何があろうと一瞬でも気を抜くな、敵は己の心…絶対とは絶対に無き事…その大護軍の教えを嫌と言うほど身体が覚えている…

 

月の異変ぐらいでは、恐るるに足らなかった…

 

五百は居たであろう倭寇も、そんな彼らに斬り倒され…なぎ倒されて…仲間の遺体の上に沈んでいった…生きている者の方が圧倒的に少ないように思えた…  

 

月の翳りと共に、空は徐々に闇に飲み込まれ…先程までの明るさが嘘のようであった。

 

 

イムジャは、月が全て隠れる筈だと言った。そろそろ頃合か…

 

「高麗の言葉がわかる者はおるかっ!」

 

チェ・ヨンの声が村中に、びんと響いた。たちまち皆、口をつぐんだ…

 

剣を合わせていた迂達赤も、グッと剣を払うと…一歩下がり相手から間合いを取り、その場で剣を構えながら、チェ・ヨンの声に耳を傾けていた。

 

だが何故か、倭寇の動きもまた…ピタッと停止してしまったのである。

 

その声には、そうして騒ぎ立てている者達を、一瞬にしてしんと従わせてしまうだけの、力がこもっていたのだ。

 

「ここにいる…何だ?」

 

母船の甲板からこちらを見下ろしている男が声を上げた。チェ・ヨンが見上げると、高麗人のようであった…見るからに髪の形が倭人とは違う…

 

母船では忙しく人々が動き、消火にあたっているようだった。海水を引き上げては炎に撒いており…既にほぼ消えかかって、もくもくと白い煙が上がっていた。

 

「そちらの船主…大将と呼ぶべきか?まぁどちらでも良い。話がしたいっ!今からそちらへ参る!甲組着いてこいっ!」

 

「はっ!」

 

その声と同時に…止まっていた時が動き出し、斬り合いが再開された。

 

チェ・ヨンがチュホンから降り…その首をポンポンと叩くと、チュホンはわかったとばかりに、争いごとのない場所まで一気に駆け出していった。

 

周辺から、血を浴びた甲組の隊員達があっという間に集まり、チェ・ヨンの周りを固めていた。チェ・ヨンから小声で指令を出された半数は、散り散りにその場を離れていった…

 

「こ、こちらには用などないと言っている!来るな!おいお前ら!弓で射るのだ!やってしまえ!」

 

雨のように降り注ぐ矢を、いとも簡単に剣で払いのけながら、母船まで辿り付くとチェ・ヨンを筆頭に梯子を登っていく。

 

母船からは、倭寇が梯子を死守すべく、刀を片手に降りてきたが、チェ・ヨンに刀を弾き飛ばされ、なすすべも無く…鬼剣を腹に喰らい、海の藻屑と消えていった…

 

登って行く途中、矢を受けてしまった迂達赤もいたが、梯子から降りようとする者は一人も居なかった。

 

チェヨンはとうとう、船の縁に手を伸ばし、甲板に軽々と飛び乗った。甲板では、倭寇が遠巻きに刀を身構えていた…

 

先程、梯子を守りチェ・ヨンの剣に破れた者達は…この船の中でもかなりの手練の者達であった…

 

その者達が呆気なく、海へと落ちて行くのを、信じられない思いで見ていた倭寇は、チェ・ヨンに少なからず恐れをなしていたのだ…

 

チェ・ヨンは躊躇わず、つかつかと前に出て行った。後ろにはテマンを従え、迂達赤が脇を固めている。

 

チェ・ヨンは更に歩み出た。そして先ほどの高麗人の真正面に恐れることなく、すっくと立った…

 

倭寇の中に緊張が走る。弓隊が一斉に弓を構えた。

 

「な、何の用だ!こ、殺されたいのかと言っている」

 

高麗人の隣に立つ…この浅黒く、一際身体の大きな男がこの船の大将のようだった…

 

「提案に参った…奪った人間達と荷を返し…二度と我が高麗に足を踏み入れぬと約束するのならば…命だけは取らぬ」

 

チェ・ヨンはしたり顔でそう言った。懐のウンスが、少し開いた巾着から顔を出し、もぞもぞと両手を出すと…チェ・ヨンの鎧につかまりちょこんと顔を出した。

 

チェ・ヨンは…う、うんと咳払いをしながら、ウンスの頭をグイっと中に押し込んだ。

 

ウンスは小声で

「大丈夫よ…大人しくしてるから」

…と、出来もしない事を囁いた…

 

「ふざけるな!と言っておられる。敵に背など見せられんそうだ!」

 

「…そうか…では致し方ない…」

 

チェ・ヨンは月を見上げた…そろそろ月は真上に登り…すっかり消えてしまいそうであった。

 

「うん!チェ・ヨン!やっぱり皆既月食だったわ!もうすぐ月が赤くなるわ!その前に…」

 

「あぁわかっておる…イムジャ危険である!あなたはしっかり隠れる!

 

「何をごちゃごちゃ申しておるのだ!来ないのならば、こちらから行くぞ!」

 

チェ・ヨンが右手に気を込め、月に向かい高く掲げた…

 

「我は高麗の大護軍チェ・ヨン!天に輝く月をも操ることが出来る!もう…間もなく全て隠れ闇に覆れ血の色と化すであろう…月が真っ赤に染まった時…倭寇どもよ!お前達は呪われるであろう!」

 

ウンスは開いた巾着の口から、興奮して顔をさらけ出しながらチェ・ヨンに言った。

 

「うん!バッチリじゃない!神々しいわ!後は…全滅させちゃダメよ!国へ帰ってから、高麗はチェ・ヨンて言う怖ろしい大護軍が護ってるから、行かない方が良いって、広めてもらわなきゃいけないから…チェ・ヨン、良いわよ!やって!耳は塞いだわ!

 

「あぁ…わかった…行くぞ」

 

チェ・ヨンは小声でウンスに答えると、右手から月に向かい、雷攻を放った!

 

 

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雷攻の音と共に、船の船尾から先ほど別れた甲組が現れた!チェ・ヨンは自分が囮となり、背後から迂達赤を船内へと、いとも簡単に導き、挟み撃ちを目論んでいたのだ…

 

 

 

うわぁ~と慌てふためいた倭寇達が、一斉に弓を射ってきた!甲板から下の船室へ逃げようとする者達を、迂達赤が襲う!

 

チェ・ヨンは、剣を躍らせ…矢を払いながら、大将と呼ばれる男へ向かって歩を進め…死体の山を作っていった。

 

その鬼神のような姿に、皆…恐れをなし始めた…もう自棄っぱちだとばかりに、斬りかかってきた剣を二つに折り、鬼剣を振りおろそうとした瞬間…矢があちらこちらから一斉に飛んできた!

 

数本は剣で弾き飛ばし、勢いよく身体を背後に仰け反らせ矢を避けた瞬間…少し開いていた巾着から、するっとウンスが飛び出してしまったっ!

 

「きゃーチェ・ヨ~~ン!」

 

ウンスは必死に手を伸ばしたが、その小さな手では到底チェ・ヨンには届かなかった…

 

チェ・ヨンは、海へと投げ出されたウンスを追って、迷う事なく飛んでいった!

 

「あっ!大護軍っ?!」

 

テマンが慌てて後を追い、海へと飛び込んだ!

 

「ここは良い!トクマン!お前も行けっ!」

 

「はいっ!」

 

チュンソクに命じられたトクマンも、槍を片手にテマンの後を行った!

 

 

 

チェ・ヨンは、落ちていくウンスを見つけ…両手でつかまえると…腹の上にウンスを護り、背後から物凄い速さで落ちていった…

 

二人の視線は絡まり合い、チェ・ヨンは泣き顔のウンスの無事を確認すると、大丈夫だと微笑んだ…

 

大きな音と共に豪快に水しぶきをあげ…チェ・ヨンは小舟へと大きな体を沈めた…バキバキっと小舟が悲鳴をあげる。

 

テマンとトクマンは水から上がると…即、二人を守るため、倭寇の前に立ちはだかった。直ぐに他の迂達赤も加わり、倭寇に刃を向ける。

 

その間、チェ・ヨンはピクリとも動かない…ウンスは自分を護る大きな手から、なんとか這い出し、チェ・ヨンの様態を確認する…

 

「チェ・ヨン!!ねぇ起きて!大丈夫?」

 

耳元で大声で叫ぶが何の反応もない…

 

呼吸…呼吸は?

 

ウンスはチェ・ヨンの唇に顔を近づけると、彼は喘ぐように息をしていた。

 

これはあえぎ呼吸…

 

「死戦期呼吸!い、いやだ!チェ・ヨンっ!起きて!お願いだから!目を覚まして!」

 

ウンスは、もぞもぞとチェ・ヨンの鎧の中に潜り…心臓の音を確認すると、彼の力強い筈の鼓動が不規則に震え…今にも消えかけようとしていた…

 

ウンスを腹の上に乗せ落下の衝撃から護るため、たいした受け身も取らずに、背中を強打したため…心臓震盪(しんぞうしんとう)が起こり致死的不整脈となってしまったのだと思われた… 

 

 

ウンスは知っている…この状態から何も処置出来なければ…二度と心臓が正常に動き出すことはない…という事を。

 

 

 「心室細動!やだ…私はこんなに小さいまま何もできないのに…除細動器もない!AEDすらない…ねえチェ・ヨン、お願いよ!目を開けて…300…299…逝かないで!誰か!私の身体を元に戻してぇー!お願い…お願いだから…戻して!誰でも良い!その為ならなんでもするわ!だから…」

 

無呼吸時…その命のタイムリミットは…5分。つまり…カウント300秒…

 

ウンスは頭の中でその数を唱え始めた…

 

ウンスの目からは一気に涙が溢れこぼれ落ち…振り仰いだ空は、皆既月食を迎えた月が…不気味な血の色をしていた。

 

 

 

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「…ブラッドムーン…294…チェ・ヨン…戻って!ねぇ…誰かお願い!彼を助けて!…何で私は…こんなに無力なの?」

 

赤い月明かりに照らし出されたウンスの顔は、あたかも眸から血を流しているようにさえ見えた…

 

「テマン君!トクマン君!」

 

ウンスはチェ・ヨンを守る二人に、あらん限りの声で叫んだが、この騒ぎの中…小さなウンスの声など届く訳も無かった。

 

ウンスは必死にチェ・ヨンの青ざめた顔を叩きながら、声が枯れるまで泣き叫んだ。

 

冷たい唇に…息を吹き込もうとも試みたが…小さなウンスではなんの意味もなさなかった…

 

「チェ・ヨン!い、一生を護ると約束したじゃない!私を置いて先に逝くなんて許さない!お、お願い…お願いだから目を開けて…もう一度私を見てイムジャと呼んで…チェ・ヨン!…私を…私をひとりにしないで…」

 

 

チェ・ヨンの命の…カウントダウンが始まった…285…284…283…

 

 

 

 

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皆様こんばんは

昨日は、本当に申し訳ありませんでした。

 

いくら文字を削除した所で…一度読んでしまったものは心から消すことは出来ません…

 

浅はかで、考えが足りず不快な思いをさせてしまい、ごめんなさい。深くお詫び申し上げます。

 

こんな未熟者の私ですが…今しばらくよろしくお願い致します。

 

 

 

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昨日…色々考え…小噺書くのも止めようかとも思ったのですが…

 

自重しつつ、己の事であれば良いかと…やはり書かせて頂くことにしましたペコ。

 

でも、今日はお話長くなっちゃったので止めておきますねごめんなさい

 

昨夜は全くお話書けず…今朝5時から書き始め昼休みなど使ってようやくです汗

 

(てぇ事は…次の話はまっさらって事で(^_^;))

 

遅くなってしまいましたが…

 

皆様、明日も暑いでしょうが…ファイティン土下座

 

 

 

はるため息

 

 

 

 

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