ウンスはチェ・ヨンをギュッと抱き寄せる。
「あなたのせいじゃない…きっと心筋症だったのね…先の世でも難しい病なのよ。お母様は、どうしても…どんなに無理をしてもあなたに逢いたかったのね…」
「俺を生んだせいで母上は…今ならわかる。父上が何故しばらく俺に背を向けていたのかも…俺とて…子の代わりにイムジャを失ったら…耐えられぬかもしれん」
ウンスの胸の鼓動を聞きながら、背中に回した手に力を込める。
「でも…あなたは無事に生まれてきてくれたのでしょう?お母様は幸せだったはずよ」
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「はぁはぁ…くぅ~!」
「大丈夫か!ミン!今産婆を呼びに行かせた!もう少し我慢してくれ!」
ウォンジクは陣痛の始まったミンの痛む腰を摩りながら、慌てていた。
「はぁ、大丈夫です、あなた…そんなに心配しないでくださいな。二人で毎日天へ祈りを捧げたではないですか。はぁはぁ…きっと無事に生まれてきます。いえ生んでみせるわ」
額に汗を浮かべ、青白い顔で眸を輝かせ気丈に振舞うミンが一回り大きく見えた…おなごとは、本当に強き生き物であるとウォンジクは思った。
ウォンジクは、産婆が来ると部屋から追い出されてしまった。その後、お産はなかなか進まず二日目の朝を迎えてしまう…
「なぜこのように生まれてこないのだ!ミンは大丈夫なのか?一目だけでも逢わせてくれぬか?」
食事を取るため、産室を出てきた年老いた産婆を掴まえて詰め寄った。
「初産じゃからの~、まぁ時間はかかるのじゃが…赤子がかなり大きいようじゃ…だいぶ降りてきたようじゃから、もうまもなくの辛抱ですじゃ…ここで待っててくだされ」
数刻後…
「あぁ~~~~~!はぁはぁ…」
ミンの大きな叫び声の後に、息を整える様な息遣いが廊下まで聞こえてきた。ウォンジクがミンのあまりの声に、戸に手をかけ中に入ろうとすると、おぎゃ~と泣く力強い赤子の声が産室に響き渡った。
神よ…ありがとう…ウォンジクは天を仰ぎ心からの感謝を伝えた。
「お待たせしました。元気な男の子ですじゃ!わたしゃ、何百人と赤子を見てきたが…このように大きな赤子は初めてじゃ。本当におめでたいことですじゃ。これでチェ家も安泰ですね…さぁどうぞ中へ…」
部屋に入ると、ミンが布団に座り、赤子に乳をあげていた。その顔はすでに慈愛に満ちた母の顔をしている。ミンが嬉しそうにこちらを見て微笑んでいる。
「あなた…やっぱり男の子でしたわ…見てくださいな。あなたのお鼻にそっくりよ。目は賢そうでお祖父様に似ていらっしゃるかしら…」
そう話す、ミンは神々しいほどに美しかった…このまま消えてしまうのではないかと思うほど儚げで、ウォンジクはミンの背後に回ると、二人をそっと抱きしめた。
「身体は大丈夫か、ミン?ありがとう…よく頑張ったな。男など何も出来ぬ役たたずである。お~~本当に大きな赤子だ!良く乳も飲んで、母を困らせず早く大きくなるのだぞ」
___________「あなた…余程大きかったのね。お母様が必死にあなたを産む姿が目に浮かぶようだわ…チェ・ヨン。何度でも言わせて?産まれて来てくれて、そして私を見つけてくれてありがとう。お母様にも本当に感謝しているわ。あなたは確かに二人に愛されてこの世に生を受けたのよ…」
ウンスはチェ・ヨンの額の髪を払いのけると、そっと口付けた。
「イムジャ…俺は…俺が幸せになどなって良いのだろうか」
ぶるっと身震いするチェ・ヨンの背を優しく撫でる。
「寒い?もっとこっちに来て…当たり前でしょ?変な事言うと怒るわよ!私が必ずあなたを幸せにするわ。二人で一緒にね…あなたはどんな赤ちゃんだったの?」
「叔母上に聞いた事がある。俺は…」
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ヨンが産まれて半年が経とうとしていた
「うふふ、本当にヨンアは良くお乳を飲む子ね!私のお乳じゃ足りていないのかもしれないわ。ねえあなた、乳母を探してもらえるかしら?」
「ああ…産婆に探してもらうことにしよう」
ウォンジクは、このところ時折苦しそうに胸を押え蹲るミンが心配でならなかった。本当はすでに乳母を探していたのである。
「こんにちは。兄上!義姉上!本日は休みを頂きましたゆえ、甥っ子の顔を拝みに参りました!」
「おお!ミョンファではないか!久しいのぉ~!よう参った…」


















ガン見しているではありませんか















