男が倒れたその先を見ると…
「大護軍!」
チュモとトクマンの声が重なった!
チェ・ヨンはチュホンに乗り、全速力でこちらに向かってくる!男の背中に突き刺さった鬼剣を抜き去ると、トクマンに斬りかかっている男に振り下ろす!
「大丈夫か?」
「はい!大護軍!医仙様が!」
トクマンが槍を投げ捨て慌てて荷台の藁を払い落とし、二人にかけられていた布をめくると…!
猿轡をはめられたウンスと大きく肩で息をするトギが姿を現した!
「イムジャ!無事か?」
トクマンが急ぎ猿轡を外し、縄を切った。猿轡を外すと、ウンスの口元にも血がこびり付いていた…
「チェ・ヨンッ!ごめんなさい!大丈夫よ!」
涙を眸にたたえ、殴られたであろうウンスの頬を見た瞬間、チェ・ヨンの内に抑えようのない怒りが湧き上がってきた!
チュホンから飛び降り、逃げようと走り出した男をとらえると、その背中に何度も鬼剣を振り下ろす。
チュモが最後の一人を生かしたまま捕らえると、チェ・ヨンはその男にも鬼剣を振りかざした!
気づいたトクマンがその前に立ちはだかる!
「大護軍!なりません!全員殺してしまえば、誰の手の者かわかりません!ここはご辛抱を!」
「くっ!どけ!相手は誰か…わかっておる!こ奴らはイムジャに触れた!許せん!」
「チェ・ヨン…トクマン君の言う通りよ!証拠が必要でしょ?私なら大丈夫だから…もうやめて!」
「イムジャ!くっ!」
チェ・ヨンは大きく息を吐きながら、怒りを中に封じ込めていった…
鬼剣を投げ捨て、ウンスの元に走りよると、柔らかな身体を確かめるかのようにきつく抱きしめた。
「イムジャ!お怪我は?どれほど心配したと?」
ウンスの血のこびりついた口元を、そっと撫でながら苦しそうに言葉を吐いた。
「大丈夫よ…本当にごめんなさい…あなた…テマン君たちは大丈夫?」
チェ・ヨンからようやく笑が溢れる。
「自分の心配をしてくれぬか?ふっ…みな無事である。今は典医寺で侍医が矢傷と火傷の治療をしておるだろう…」
その時、捕らえた男が元の言葉で何かを叫び、暴れだした。チェ・ヨンは手に雷攻を迸らせ、至近距離から男に向け雷攻を放った!
トクマンとチュモは巻沿いを喰らわぬよう、慌てて逃げる。男は雷攻をまともに受け、後ろへ弾き飛ばされごろごろと転がっていく。そのままピクリとも動かず、白目を向いて倒れていた。
「チェ・ヨン!死んでしまうわ!あっ!トギ!ありがとう…あなたのおかげよ!良くやってくれたわ…二人も聞いたでしょ?トギの声…」
二人は顔を見合わせ驚いた顔をしていた。
「あれはトギの声だったのか!トギ…良かったな!声が出せるようになったのか?トギのおかげで気づいたんだ…ありがとう」
「ん?どういうことだ!トクマン!!荷車を調べなかったのか?」
チェ・ヨンの目がトクマンを射るように捉える。
「あっ!いえ…あっ…調べたのですが…えっと…いてっ!」
チェ・ヨンは思い切り頭を張り倒した!
「お前の事だ!何台も荷車を調べ、居るはずがないと決めつけ、良く調べもしなかったのであろう!お前の悪い癖だ!」
「はっ!誠に申し訳ありません!」
「トギ…助かった…本当にありがとう。聞いたであろう?トギの声が皆に届いたのだ…俺たちはトギの声を聞き逃さぬ…だからもう苦しむな。お前のせいで父は亡くなったのではない。トギが助かって喜んでおったであろうと、俺は思う…」
「そうよ…、トギ…あなたのせいではないの…だからもう苦しまないで…」
ウンスがトギを抱きしめると、トギは堰を切ったように大きな声で泣き出した。まるで、子供に戻ったかのように…
「あぁ~~~あぁ~~~」
「あなたは悪くない…あなたのせいじゃない…もっと泣いて良いのよ。こんな想いをずっと今まで一人で抱えてきたのね。お父様もお母様も…あなたのせいだなんて思っていないわ」
「うぅぅ~~~~」
トギはぼろぼろと涙を流しながら声を張り上げていた。
うん…これならもう少しで話せるようになるかもしれないわ…自分の声がみんなに届いた…これはトギにとって大きな一歩…ゆっくり頑張ろうね…トギ…
そこへチュンソクが慌ててやってきた!
「医仙様!よくぞご無事で!大護軍!」
「ああ…いろいろすまなかった。みなにイムジャとトギが無事見つかったと布令を出しておいてくれ!我らは、皇宮へ戻る!」
「はっ!お任せを!チュモ!お前は共に来い!トクマンはトギを!良いな?」
「はっ!」
____________チュホンの背に揺られ、二人は指を絡めお互いの温もりを確かめ合った。
「トクマン!先に行け!」
「はっ?なんで…いてっ!トギ!なんだよ!えっ?邪魔す…あぁ…そういうことか…はい!では先に帰っております!」
走り去るトクマンの背中を見ながら、ウンスを抱きしめる。
「イムジャ…この数刻…生きた心地がしなかった。頼むから無茶はするな」
「…ごめんなさい。あなたの言うことを聞かずに…」
ウンスが後ろを振り向くと、チェ・ヨンの熱い唇が降りてきた。優しく唇を食み、こびり付いていた血を舐めとっていく。
「っつ…」
「すまぬ、痛かったか?ふっ…だが、自業自得とはこのことである」
「…はい…ごめんなさい…でも…」
優しい唇に声を塞がれ…その先の言葉は伝えられなかった…
茜色に輝く夕日が、重なり合った二人の影を長く地に映し出していった…
茜色に輝く夕日が、重なり合った二人の影を長く地に映し出していった…
ちまらせてもらいました

美しいですね



皆様おはようございます

今週も始まりました

小噺書いてる時間がありやせん

夜にでも追加しとこうかな

あっ!コメ返終わりましたで

頑張りました

では今週もファイティン!



