二人が村へ戻ると、まるでお祭りのような騒ぎだった!テマンとヨンホがキムの屋敷より連れ帰ってきた家族との再会を果たし、歓喜の声が上がっていた。
二人を見つけた長が、妻と娘と思われる二人を伴いやってきた。
「大護軍様、此度のこと…何から何まで本当にありがとうございます。なんとお礼を申し上げて良いか…」と、3人が頭を下げる。
「いや、我らこそすまぬな。このような小さき村まで目が行き届かず…苦労をかけた。陛下には次の郡守を選出していただき、すぐに来てもらうよう手配をしておく」
「はい、ありがとうございます。みな家族が戻り、喜びに打ち震えております。…何名かは、キムに逆らい命を落としたようですが…これは妻と娘にございます」
二人を見たウンスは息を呑み唇を噛み締める。奥さんだと紹介された女の人はヨンイルより遥かに年上に見えるほどに老けて、髪は白くなり、立っているのもやっとな程に疲れきっていたのだ。娘の方は男が怖いようでチェ・ヨンをビクビクしながら上目遣いに見ている。
「…ヨンイルさん、帰って来られた皆さんを診察したいのだけれど…良いかしら」
「イムジャ?今からですか?もう時も遅いというのに…」
「だって、明日にはここを立つつもりでしょ?今しか診てあげられないから…」
「…はい、そのつもりです。ふっ、ダメと言っても聞かぬのでしょう?」
チェ・ヨンは一刻も早く開京に戻りたいと願う己の気持ちを、ウンスがちゃんと気付き、口には出さずとも同じを想いで居てくれているのだと、熱い想いが込み上げてくるのをぐっと飲み込む。
「えぇ、明日、あの馬車の中で眠るから大丈夫よ。だからお願い。まずは、チュンソクさんとあなたから…」
ウンスはテキパキと二人の火傷に、炙ったツワブキの葉を貼り付け、包帯を巻いていく。チュンソクに至っては両手に包帯をしているので動きがかなりぎこちなかった。
「チュンソクさん、ロボットみたい!笑っちゃいけないけど、ぷっあはは!」
ウンスはお腹を抱えて笑っている。
「医仙様、ろ、ろぼっととはなんでしょう?」
「チュンソク、気にするな、どうせ天界語であろう。あんなに楽しそうに笑っておるイムジャをようやく見られた…お前に礼が言いたいくらいだ。どこか淋し気な笑顔ばかりであったのだが…あの顔を見ておると昔を思い出さぬか?」
「そうですね、本当にいつも医仙様はお強く、何があろうと健気に笑っておられました」
「あぁ、初めはなぜあのように笑うのか、理解が出来なかったのだが…俺には楽しいと言う感情がしばし欠けていたからな…俺はあの方の笑顔を生涯お守りしたいのだ。これからも手伝ってくれるか?チュンソク?」
「元よりそのつもりであります、大護軍!迂達赤一同、命を懸け医仙様をお守り致します!それが大護軍の…延いては高麗のためかと!」
跪き、正式な礼をとるチュンソクを、やっと笑いの収まったウンスが不思議そうに見ていた。
「何二人で内緒話してるの?あっ!チュンソクさん、手を地面につけちゃダメよ!」
「は、はい!医仙様」
いつまで経ってもウンスには敵わないチュンソクであった…
***********
朝日が東の山々の合間から顔を覗かせる時刻…
あれからずっとウンスは長のヨンイルと一緒に村人たちの治療にあたり、出来うる限りのことをヨンイルに伝えた。女の人たちはあの屋敷で酷い行いをされていて、心が怪我をしていること。彼女達を治す薬は、支え共に寄り添う…温かな人の心しかないのだと。
それ以外にも、怪我をした時の薬や漢方薬になる植物なども教え、縫合のための針と糸、持針器などの一式をヨンイルに渡したのだ。
「医仙様…このようなもの頂いても良いのでしょうか…」
「えぇ、大丈夫よ!この慎重な性格の大護軍様が沢山作ってくれていたから、ふふ。これで縫合が出来るでしょ?コツはね、昨日教えた通り躊躇わない事と少し肉が盛り上がるくらいきつめに縫うことよ」
「はい、医仙様。ありがとうございます。…やはりあなたはスンジャにどこか似ています。誇り高く美しい…」
「スンジャさん?その方はヨンイルさんの…」
「25年程も昔の事です…当時の長の娘だったスンジャは私の許嫁でした。ある日この村に取立てに来たキムに気に入られ、連れて行かれるところだった…だが、お前のような奴の物になるくらいなら、ここで切り捨てて欲しいと…狂ったように怒りだしたキムに本当に斬られてしまったのです…それから私はしばらく村を出て旅に出ました。医術を学ぶために…。スンジャはあの時すぐに事切れた訳ではないのです…私の手の中でゆっくりと血を流しながら…私にすまないと言い残しこの世を去っていった…あの時、自分にも何かが出来たのではないかと今でも後悔しています。それで医術を…」
「そんなことが…」ウンスはいつのまにかこの父親に良く似たヨンイルの手を両手で包み込んでいた。
「それからというもの、我らはキムに対して言いなりになってきたのです…逆らわず言う通りに…。スンジャの命と引き換えに得た生き残る術…」
「ヨンイルさん、気持ちはわかるわ。でもね、人は虐げられることに慣れてしまってはダメなの。いつかきっと皆が幸せに笑い合える日がくるわ。だからそれまで戦いましょう?それにね、今の王様はとっても話のわかる良い方よ!この大護軍もね。私達はもうすぐここを立つわ…でももし、私の助けが必要な事があったら開京まで来てね?」
「なぜそのように私に親切にして下さるのでしょう?」
「あなたは…あなたは、天界にいる私の父に似ているの…とても良く…またいつか会いましょうね」
そう言うと、驚くヨンイルの首にふわりと手を回し、お別れのハグをする。チェ・ヨンは側で見ていたのだが、俺のため…天界で出来なかった父親への別れの挨拶のつもりなのだろうと、グッとやり場の無い苛立ちを抑え、優しくウンスの背を撫でる。
「さぁ、イムジャ…既に陛下に書簡も送り、テマン達も戻って参りました。出立の準備が整ったので、そろそろよろしいか?」
「えぇわかったわ。ではヨンイルさん…皆さんお元気で!」
「大護軍様、医仙様、皆さん本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません」
「あぁ、しかしまだこれからだ。しっかり頑張るのだぞ」
「はい、お任せ下さい」
ウンスは馬車に乗り込み、窓を開けみんなに手を振っていた。
馬車を走らせる音に紛れ、潤んだ眸で本当に小さな声で囁いた…
「お父さん、ごめんね…さようならも言えず…」
その小さな小さな呟きを…ウンスの心からの囁きを…チェ・ヨンは聞き逃さなかった…ウンスの涙が乾くまで、そっと後ろから抱き締めていたのだった…。












こんにちは
やっと村を出ますヨン
お待たせ致しました
長かったですね
後は開京まで

突っ走りますか

まだ寄り道させるか
悩んでいる所です
そして、今日もまた娘とイオンへ
let's go
ま、また
お孫ちゃんの服を
買って娘に怒ららましたとさ
コメ返途中ですみません
もう少しお待ち下さいませ
では、アンニョン

~追伸~
うちの次男が小6の時
ブランコから後ろ向きに飛び降り

両手を骨折したのです
簡易ギブス巻かれ

ロボコップみたいでした


それを思い出しての
チュンソクのロボット


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