再会してから初めての夜……潮騒を遠くに聴きながら穏やかに更けていった。時折、ウンスは一人で居た時の身を守る術…フッと意識がはっきりと目覚めてしまう時がある。いつもの様に恐る恐る瞼を開くと、今宵は隣でチェ・ヨンが強く手を握り、そして髪を撫でてくれていた。
「あっ…ごめんなさい…あなたが眠れないわね…。もう休んで?トクマン君たちは大丈夫なのかしら?」
「奴らの心配は無用。イムジャのおらぬ4年の間に更に鍛えてあります。交代で休んでおるでしょう。俺は、こうしてイムジャを見ていたい…眠る時間すら惜しいのです…寝ずとも大丈夫。ずっとここにおりますゆえ、さぁ…気にせず休んで」
「えっ…うん。ありがとう…」
ウンスは久しぶりの安心感にまたすぐ眠りに落ちる…。
*******
そのまま、朝チェ・ヨンに起こされるまで、一度も起きることなくぐっすり眠りについたウンス…こんなことは久しくなかった。馬車の隙間からは朝の光が差し込み、暗闇を消し去っていく。
「イムジャ…イムジャ起きて下さい。風呂に入りたいのではなかろうかと、2刻ほど誰も入れぬようにしたので今のうちに…」
風呂と聞いてパッと目を覚ますウンス。
「入る!入ります!嬉しい!」
「はっ。そんなに嬉しいですか?さぁ着替えはこちらに。またこれを被って下さい」
外へ出ると、きゅっと気持ちが引き締まる程冷たく清々しい風が顔を撫で、早く目覚めろと急かす…。霧に霞んだ港は、昔観た…父の大好きだった時代劇の中の一場面、そのもののようであった。
まだ風呂屋を開ける時間ではないのに、チェ・ヨンが無理やり頼んでくれたようだ。店の女将があまり良い顔をしていない。風呂場の脱衣所の横には昔と変わらず、チェ・ヨンが守ってくれている。
本当は大好きなお風呂に入りたかった…。でも昨日の事もあってとても言えなかった。きっと彼は江華島の事を覚えていてくれているのだ。4年も前のたった1度だけの事を…。首を斬られるとしても、髪だけは洗いたいと言った、あの時の私の事を…。
こんなに小さな事なのに、何も言わずとも気付き、先回りして自分のことを考えてくれている…。ウンスは心まで洗われるようだった。
ゆっくりもしていられないのだろうと、早々に風呂からあがり、髪も水が滴るほど濡れたまま風除けをガウンの代わりに目深に被り出て行く。
「もう良いので?では、朝餉を馬車の中で。急ぎ出立致すゆえ」
「はい。了解しました。隊長!」
「ふっ。イムジャ…久しぶりですね…もう一度隊長と…」
「た・い・ちょう…」
「うっうん…大護軍!準備は整いました!」
「はぁ…全く…お前もか…トクマン!テマン!頼んだぞ!出立する!」
「はっ!」
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走る馬車の中…雨除けを被ったままウンスはチェ・ヨンと朝食を食べた…自分の好きなものばかり買って来てくれてあり、食べ物位で涙が出そうだった…。
食べ終わると、知ってか知らずか…チェ・ヨンは、ウンスのフードを外す。
「イムジャ…こちらへ。風邪をひきます。」
と、髪を櫛で梳きながら乾かしてくれた。
「チェ・ヨン…ありがとう」
「何がですか?己のやりたい事をしているまで。二度と後悔せんために…」
「後悔か…私も後悔するのはあの時で終わりにしたいわ。あの時…あのまま真っ直ぐあなたの元へ向えば良かったと、何度思った事か…もっと強い思いでくぐっていればと…。そしたら、何かが違ったのかもしれないって…」
「イムジャ…離れておった月日…本当に辛かった…だが、これまでの時があったからこそあの地を元のもとより奪還出来たのだ。俺たちには、恐らく必然だったのでしょう…」
「えぇ、そうなのかもしれないわね…」
やっと動き出した二人の時間。
取り留めのない会話が心地いい。
たくさん話して、たくさん聞いて。
心の空洞をお互いで埋める。
だいぶ時も過ぎ、秋の日の太陽が、澄み切った真っ青な空の真上に登る頃、深い森に差し掛かった。すぐ横を小川がちろちろと流れている。トクマンは、この辺でそろそろ馬を休ませ昼食をと、場所を探していた。
その時…
「ん?…イムジャ!伏せて!」
と、チェ・ヨンがウンスの手を引き馬車の床に組み伏せ、上から覆いかぶさる!途端、馬車にヒュンヒュンと矢の突き刺さる音が響き渡る!













皆様こんばんは
3連休最終日
何もせず…貯金魚など、とんでもない
いつの間にか寝ていて起きたら0時…やべ
途中までは、書いてあったのですが…残りやっと書き終わりましたヨン
こんな時間のアップでごめんね
台風どうですか?ちーば君はだいぶ雨風が強くなって来ました
早く通り過ぎて欲しいですね
では、また寝ます
おやすみなさい
良い夢を

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