(トクン…トクン…何の音?とても落ち着く…。それにあったかい…。チェ・ヨン…?それともまた夢なのかしら?いつも夢から目覚めるとあなたの温もりを探していたわ…チェ・ヨンあなたはきっと大丈夫よね…私を置いて逝かないで…お願い…チェ・ヨン…)
「イムジャ!どうしたのです?起きて下さい!イムジャ?」
ウンスはチェ・ヨンの片腕に抱かれながら、ぼんやりと深い眠りから目覚めてきた。その顔には、まだ泣き顔が張り付いたままであった…。
澄んだ双眸は涙で潤み…霞んだ視界にに映ったのは、心配そうに自分を覗き込み、涙を優しく掬い上げてくれるチェ・ヨンの顔であった…。
自分に回されている腕に、強くしがみつき爪を立ててしまっていたようで、彼の腕からは血が滲んでいた…あっと気付いたウンスは、ごめんなさいとチェ・ヨンの腕の血をぺろっと舐めとった。
「イムジャ、どうしたのですか?あの時のように怖い夢でも見たのですか?」
「…ううん、大丈夫…心配しないで。それに…言いたくない…」
ウンスは、チェ・ヨンと離れていたこの1年…自分を守るため、江南にひとり住んでいた頃より更に強くならなければいけなかった。強固な鎧を身に纏うしかなかったのだ。
そしてそれは…こうしてやっとチェ・ヨンの腕の中にいる今も、変えられずにいた…。まだ、チェ・ヨンと逢ってから半日と経っていないのだ。無理からぬことである。
「イムジャ!あの時とは状況が違う。あなたはもう俺の者となり、共に生きてくれると申したではないか?隠し事はせぬと言ったことすらお忘れか?」
「…あっ…違うの…怒らないで…。あなたに…ここ高麗に戻れたことがまだ信じられなくて…。現実と夢の狭間にいるみたいなの…。あなたと離れてから、毎日のように同じ夢を見ていたわ…」
ウンスの眸は、何も捉えず虚ろに宙を見据えているようだった…
「イムジャ、何でも話して下され。これからは俺がおるのです。一人で怖い思いなど決してさせない。」
ぎゅっと自分の胸にウンスを抱き寄せ、絹糸のような柔らかな赤い髪に手を入れ、何度も掬い上げる。
「…あなたがだんだん凍りつき…私の腕の中で眸を閉じて固まっていく…一生懸命温めようとしたけど…遅くて…。そんなあなたを残していった自分が許せなくて…そんな夢を毎日見るの…。」
「…イムジャのせいなどではない。あなたのお陰で俺は今こうして生きているのですよ。イムジャは必ず100年前に生きている…そして俺へ辿り着くまで決して諦めないと、俺の心が知っておったから、自暴自棄にならずあなたの帰りを待って来られたのだ…。これからは愉快な夢を二人で見ることが出来ましょう。さあイムジャ…もう泣かないで…」
「チェ・ヨン…ありがとう…。そうね、もう手を伸ばせばあなたに触れることが出来る…。はやくこの現実に慣れなきゃね?」
「ええ、それは俺もですが…こうしてイムジャに触れておると、心が浮き足立って他のことが目に入らなくなる。こんなところを見られでもしたら、叔母上になんと言われるか…」
「あっ!叔母様はお元気?早く逢いたいわ!王様や王妃様にも…あとトギにもね。」
その時、馬車の歩みが止まり扉を叩く音がした。
「なんだ?テマン。」
「はっ!み 港に着きました。馬車ごと乗せられる大きな船を調達して参りますのでしばしこのままお待ちを。」
「ああ、頼んだぞ、テマン。 イムジャ、その話はまた後ほど…。今の俺達には、贅沢にも時がいくらでもあるのです。さぁ、まずその目立つ服を着替えあなたを隠さねばなりません。」
立ち上がり、ガサガサと荷物を紐解き、目立たぬチマを出してくれた。
「これに着替えて下さい。」
「わかった…。ねぇ、着替えるからちょっと出ててくれない?」
「もう、共にいる間は離れぬと決めました…諦めて下さい。後ろを向いておりますのでその間に着替えを…。」
「もう!大丈夫なのに…!」
ウンスは、チェ・ヨンが本気でそう言ってくれているのだと感じて、内心はとても嬉しくて安堵感に包まれていた。
「いいわよ!」
チェ・ヨンは、クルッと後ろを振り向くと、なるべく目立たないチマを選んだのだがそれでも、やはりウンスの美しさに目を奪われてしまいしばらく固まってしまった。
「あれ?なんか変だった?久しぶりにチマなんか着たから、間違えてる?」
チェ・ヨンは咳払いをして、置いてあった自分の外套を頭からスポッとウンスに被せ、全てを覆い隠す。
「んっ?!私、寒くないわよ?雨も降ってないし…」
名残惜しそうに、ウンスを抱きしめその香りで鼻腔をいっぱいにする。
「…イムジャは何を着せても目立ちすぎです…。さぁ、闇にまぎれて参ります。俺の前を歩いて下さい。その方が守りやすい。良いですね?」
「はいはい。でも私が帰ってきたことなんて誰も知らないんだから、大丈夫じゃないの?。相変わらず、心配性なんだから…」
「医仙としてではなく、ただの女人としてもあなたは目立つのです。少しは俺の心配も考えてもらわねば…」
と、小言を言うチェ・ヨンを尻目に、ウンスはどこ吹く風である。やっと馬車から開放されると外に脚を踏み出した。
そしてキラキラと金箔をはったような夕陽の空の下、秋の冷たく澄んだ風がウンスの胸の中を吹き抜ける…。大きく息を吸い込むとチェ・ヨンの外套から彼を感じた…。懐かしい…本当に帰ってきたのね…ずっと彼に抱きしめられているみたい…今まで、心の奥深くに巣食っていた不安が、彼の温もりで薄氷が溶け落ちるように、ウンスの中から消えていくのを感じた。
もう大丈夫。













皆様、こんにちは
昨夜は10時に寝て今朝は6時まで寝ておりました
久々の8時間の睡眠
スッキリでございます
ちょっと書いてあったので、お昼休みに書き足しましたよ
あまり進展もございませんが、久々にラブラブ&焼きもちを焼くチェ・ヨン…
この二人が書けるので楽しいです
あっ!?それと二人の話し方…ちゃんと若くなってますか
それが心配なの
歳とった2人ばかり書いてるので
のんびりお付き合いくださいね
それからタイトルですが
あまり気にしないで下さい
今回はその都度フッと思い浮かんだ漢字をタイトルにしてます
相変わらず適当です
前回の「陰陽」 これ読んで決めました
いつものポチッな

それからご心配頂いた面接
2人とも入社することになりました
わーい
辞めないでねと願うはるでございました
明日から「嬉し楽し大好き」3連休でございますね
頑張って貯金魚を作っておきます
コメ返もゆっくりお返ししていきますので、もうしばらくお待ち下さいね
そしてまたまた台風19号
皆様お気をつけて( ー`дー´)キリッ
では午後からもアジャ

追伸~
いつも“いいね”“ペタ”をありがとうございます

そして、たくさんの方が何度も読み返して下さっているようで
本当に感謝です
これからもカタツムリのように
更新してまいりますので宜しくお願い致します

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