見知らぬ己 16 | 信義〜♪ 私の中の3巻…(シンイ・二次小説)

信義〜♪ 私の中の3巻…(シンイ・二次小説)

シンイの二次小説を書かせて頂いております。
読み終わった後に、心がほんわかあったかくなるような、物語を綴っていきたいです。

「それでは失礼いたします」


二人は、チェ・ヨンの元を後にする。


「ねぇ、医仙様の所に行きましょう?その顔の怪我、診てもらわないと…」


ソナはジフの顔の傷にそっと触れる…


「いや、まずチェ・尚宮様にお前の事頼みに行くのが先だ。こんなの怪我の内に入らねぇから心配すんな。行くぞ」


そう言うとソナの手を引き歩き出す。


ソナは、ジフの心遣いが嬉しくて、彼の大きく温かな手をキュッと握り返し後に続いた。


チェ・尚宮を探して、2人が手を繋いで歩いているのを見た宮使いの女達が、ザワザワと騒ぎ出す。嫉妬や羨望の眼差しが痛いほどソナに刺さってくる…。さすがに武閣氏はソナに敬意を払っているので口には出さないが…思いは同じであろう…。

(なんであの人と…?
(ジフより年上でしょ?)


ジフは相変わらずどこ吹く風だが、そんな辛辣な声が聞こえてくるたび、下を俯いてしまうソナ…あまり人と関わらずに生きてきたので、悪意に晒される事に弱いのだ。


チェ・尚宮は武閣氏の訓練場にも、王妃様の所にもおらず、坤成殿の奥の兵舎へと向かう2人…。


その途中、美人揃いで有名な戯縄 (綱渡り)の一座が、明からの使者と王に芸を披露し終えたようで、前からぞろぞろと歩いて来た。みなジフと馴染みがあるらしく、ソナを一瞥した後、“また来てよね”、“今度は私と遊ぶ約束よ”などと、ジフに声をかけていく。


「悪いな。俺、そういうのもうやめたのさ。他を当たれよ…。」


昨日までのソナなら何も感じなかったかもしれないが、ジフに抱かれるという事がどういう事なのかわかってしまった今…心がどうしようもなく乱れていた…。


兵舎の近くでソナは、このまま手を繋いであの扉をくぐる事が、少し怖くなってきてしまった…。なんと言っても相手は皇宮内はもちろんのこと、この辺りでは知らぬ者など居ないジフなのだ。今よりも周りに色々言われるだろう…


チェ・尚宮の影のようにここ数年を生きてきたソナ…。本当に自分なんかがジフと一緒になっても良いのだろうか…そんな考えが頭から離れなくなってしまった。

 

兵舎の前でジフの手を引き、立ち止まる…

 

「どうしたんだ?ほら行くぞ?」

 

下を俯いていたソナが顔を上げジフを見つめる。


「本当に私なんかで良いの?あなたならどんな女の人でも思いのままでしょ?今なら、大護軍様だけしか知らないわ…。まだ引き返せるわよ…?」


震える声でそう告げる…。

 

ジフは今までに見たことのないような顔を見せた。

「…お前、それ本気で言ってるのか?俺の気持ちがその程度だと思ってんだな?信用出来ねぇって事か…わかった。もう良い…」

 

ジフはソナの手を振りほどき、後ろも振り返らずに歩いていってしまった…

 

ソナは、その場に座り込んでしまう。立っていられなかったのだ…彼に振り払われた手を見つめ、涙があとからあとから溢れだし止める事が出来なかった…。涙で霞んだ視界の中で、ジフの背中がどんどん小さくなり見えなくなっていく…喉が張り付き、“行かないで”と言う言葉すら出すことが出来ない…胸が苦しくて、刺された時より痛かった…

 

大丈夫…彼のためよ…今までだって私は一人で生きてきたじゃない…それにまだ彼とは逢ったばかり…夢だったと思えば良いの。大丈夫よ…ソナ…きっと忘れられるわ、いつか…必ず。







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