あの時のウンスの独り言…16

………どうしよう………。

こないわ…もう何日目かしら…。ひと月はきてないわね。…。

こっちに来てすぐの頃は、さすがに身体が驚いて生理不順にもなったけど、最近はとってもきっちり来てたのにな…。

もしかしたら、あの日？…。そうだとしたら2ヶ月の半ばに入る頃かな…。

チェ・ヨン…何て言うかしら。少し話すのが怖い…。

前に、俺には子を持つ資格などないなんて言ってたし…。そんな事はないわって何度も言ったけど…。

大丈夫。あんなに優しい彼の事だもの…。きっと喜んでくれるはずよ。

はぁ～でも先に叔母様に相談した方が良いかな…。それとも、他の典医寺の医師に診てもらう？…。どうなの？ウンス…あなたの診断は…。間違ってたら大変よ。

エコーもない、赤ちゃんの心音を確認することも出来ない、尿検査も出来ないし、まして自分の内診も…。それに体温計すらないのよね…。でも、微熱が続いてるのは確か…。胸も張っていて身体は怠いし、いつまでも眠い…。そして何より身体より心が変わってきたと思う。ただ、悪阻がないのよね。でも悪阻のない人も研修医の時にたくさん見てきたわ。だから確かだと思う。医師としての勘と言うより、女としての勘…。

私は赤ちゃんが出来た。

今日、チェ・ヨンが遠征から3日振りに戻ってくる…。きっと今夜、彼は私を求めてくるはずよね…。でも、妊娠がわかった今は……応えてあげられないわ…。安定期に入るまでは無理。変に営みを断って彼を傷つける事だけはしたくない。だから、今日きちんと伝えないといけないわね…。

大丈夫よ、ウンス！あなたの愛した人を信じて！

あっ…チュホンの足音…！

彼が帰って来たわ！

癖で走っちゃった…。はぁ～転ばなくて良かった…。

3日振りに逢ったチェ・ヨン…。

お帰りなさい！やっぱり私の居場所は、あなたの腕の中ね。本当に安心するわ。もっときつく抱き締めて…。

ただいま戻りました。嬉しそうですね。何か良いことがあったのですか？

そう言ってチェ・ヨンはいつものようにキスしてくれた。そしてキスだけで、私に熱があるのがわかったみたい。これだもの、迂達赤のみんなに慕われる訳よね…。見てないようでちゃんと見てくれてるし、こっちがわからないように気遣いもしてくれる。本当に優しくて暖かい人…。

微熱があると言ったら、疲れているのに私を抱き上げて、風邪ですか、早く休んでくださいってベッドまで連れて行ってくれた。

ここで、言わなきゃ！悩んで居ても仕方ない！私らしくストレートに話そう…。

彼の、優しく潤んだ漆黒の瞳から目が離せない…。きっと、チェ・ヨンも私と同じ想いを抱いてくれるはずよ。

チェ・ヨン…私ね、たぶん、赤ちゃんが出来たみたいなの…。つわりがなくて気付くのが遅くなっちゃったけど、そうだと思うわ…。

彼の瞳を見つめながら話したの。

聞いていたチェ・ヨンの顔が初めはとても驚いていて、だんだんと嬉しそうに笑ってくれて、最後は目に涙を溜めていた…。そして、自分が父親になれるのかと、涙してくれた…。良かった…。やっぱり喜んでくれた…。私も泣きそうよ。

私は彼の涙を拭いながら、微笑んだわ。私達、頑張って親になりましょって。

そうしたら彼が私をベッドに座らせて、そっと後ろから抱き締めてくれた。

私の肩に顎をのせて、チェ・ヨンが私の耳元で囁いたわ。ありがとうと…。守るものが増える事がこんなに幸せなことなのだと気付かせてくれて。私と赤ちゃんは何に代えても守ってみせると…。

彼の約束はいつも命懸け。それを知っているからこそ、私はあなたを守りたいのよ…。

その夜はいつまでも取り止めのない話をしたわね…。彼の暖かな腕に抱かれながら…。しばらくは…無理なのよと話すと、俺は4年もイムジャのお戻りを待っていたのですよ、3月などなんともありません…身体を労わって下さい。こうしてあなたを胸に抱いているだけで、俺は幸せですって言ってキスしてくれた。まだ、誰にも言わないでねと言うと、残念そうに笑ってたわね。子供みたいに…。誰かに話したかったの？ふふ。

どうしようもなくあなたが愛おしい…。今までの私の全てを対価に、あなたと共に生きる事を選んだんだもの。幸せにならなきゃね。

だけど今、無性にお母さんに逢いたい…。私を産んでくれてありがとう。そしてごめんなさい…。私、母親になるわ。もっと強くならないとね…。

私達には未来へ続く道がある…。それがどんなに困難な道でも私はあなたと共に歩んで行くわ。あなたを守るためなら歴史をも変えてみせる。

ありがとう、チェ・ヨン…。いつまでも一緒にいてね……。