賢明な御判断期待しております…では、これにて失礼します。
さて、どうするのですか?陛下…はははっ!ほんに久しぶりに楽しゅうて仕方ないわ…チェ・ヨンお前は罠にかかったのだ!逃げることは叶うまい。本当は生かして使いたかったがまぁ仕方あるまい。医仙だけ手に入れば良しとしよう。気に食わぬ現王も、チェ・ヨンさえ居なくなれば大人しゅうなるだろう…
ましてこのガキなどどうでも良い。
死のうと生きようと勝手にいたせ。
いざとなれば代わりはもう一人おる。
はははっ!はぁ~ははっ!
徳成府院君が居なくなった後…小瓶だけが残された…
震える両手で小瓶をつかみ、じっと見つめる…
ヨンに話すべきか…嫌、聞かなくともヨンの答えはわかっておるではないか…
“どちらかが飲まねばならぬのであれば、もちろん私が…。慶昌君様は、お悩みになる必要も、ご心配にも及びませぬ。”と…きっとなんのためらいもなく言うだろう…
ヨンはたった一人の大切な家族だ。
まだ王であった頃、心弱き我がファンに会いたいと申した時も知恵を絞り、毎日のように会わせてくれた…どんなに心が救われたか…。
幼い頃より父も母も居ないと思うておる。いつも守り慈しんでくれたチェ・ヨン…我はもはや王ではない。それなのにまだこのように命をかけ守ってくれている…
我はそう長くはないであろう…毎日痛みは増し、その時間も長く、耳だけにあらず…あちこちに痛みを感じるようになってきた…
昨日の医仙の様子からもわかる。医仙でも治せぬのであろう…天界の医術でも…
ならば…
己の命でヨンが助かるのであれば…きっとヨンは医仙を守ってくれるであろう…
消えかけておる己の命一つで、あの者たち二人が助かるのならば……
医仙をあの徳成府院君などに渡してはならぬ!
医仙はとても良い香りがした…このようなお方が母であったらと…
頭を撫で、膝枕をし、添い寝までしてくれた…
我を普通の子のように扱こうてくれたのは、医仙のみ…。それがどんなに嬉しいことであったか!
天界の医員、医仙よ…死への旅路の前にお会いでき光栄であった…
ここに幽閉されてから他の者と話しをすることさえ出来ず、食事もままならず、毎日を寝て過ごすしかなかった我を…一時、蘇らせてくれた医仙…
慶昌君は医仙に作ってもらった紙飛行機を懐から出し飛ばしてみた…
医仙の言葉を思い出す。
“空には、飛行機と言って人がたくさん乗っても空を飛べる馬車があるんですよ!大きな大きな鳥のような形です。今、紙飛行機を作ってあげますね!
はい!出来ました。これをこうして…
ね!やー!飛んだでしょ!慶昌君様にプレゼントします!あ~差し上げますね!ウフフ…そう、ここを持ってこうして飛ばすんですよ!
あとは、なんの話がいいですかね~……”
夢のような時間でした。自分が天界に行ったような気さえしたのです。神などいるものかと思っておりましたが、チェ・ヨンと医仙に出会えたこと心より感謝しております…
神よ…
我の時間もここまでのようです。
今度は暖かい家族があり、笑の絶えぬ平民として生きてみとうございます…
慶昌君は小瓶の栓をぬき…一気に飲み干した…

にほんブログ村
