後は水をなどを包み、そこを後にした。
月の明るい夜だった。
チェ・ヨンは、チュホンが早く疲れてしまうかと思ったが、もう1刻もウンスと離れがたく隣の馬に1人乗せておくのも心配だったので、抱き上げチュホンに乗せ、自分は後ろに跨り手綱を握る。そしてキ・チョルの馬車から外した馬には荷物を乗せ、引いて行き交代で乗ろうと考えた。これでイムジャの後ろは安心だ。前だけなら守りやすい。
ーイムジャ出発します。…その前に…最後にもう一度だけ聞きます。本当に天門には行かれなくて宜しいのですか?私のせいで…こんなことになり申し訳も…
ーあなたのせいじゃないと何度も言ったはずよ。
チェ・ヨンを振り向き軽くチュッと唇を合わす。そして前を向き直りチェ・ヨンに寄り掛かる。
ーえぇ。もう、決めたの。2012年の両親には、なんとかして無事を伝える事を考えるわ。時間はいっぱいあるんだもの。諦めない。私の性格良く知ってるでしょ?
それにちょっと王様に助けてもらえたら…もちろんあなたでもOKよ!!二人は2012年に祠堂がある位の有名人なんだもん。絵も残ってる。ふふふ。それが今や私の恋人なのね…
ねぇねえ、それより私、一人で乗れるわよ?チュホンが大変でしょ?大丈夫なのに…
チェ・ヨンはウンスが何を企んでいるのか聞きたかったが、今は早く出立したかった。胸騒ぎがする…
ーいえ、危険があるやもしれませぬゆえ、私の身体に隠れて居て下さい。…耳に口付けをしながら、ニヤリと笑った。
チェ・ヨンはウンスの肩から毛布をかけて包み、左手は2頭の手綱を持ち、背中に剣を差し、右手はウンスの身体をしっかりと自分に引き寄せまだ、イタズラを繰り返している。この人にこんな所があったなんて…クスッ
ーもう、やめてったら!くすぐったいし、チュホンに乗ってるのよ…刺激が強すぎるわ…ちょっ!やめてっ!迂達赤に話すわよ!隊長の面目とやらを丸つぶれにしちゃうんだから…もうほんとに…クスッ
ーされど3日もすれば開京に着いてしまいますので、それまではお許しいただけませんか?イムジャ…
ーチェ・ヨンたら、母性本能くすぐるのがうまいわね。そんな顔ずるいわよ!捨てられた子犬みたいな顔をして…あーもうわかったわ。私の負けです。好きにしていいわよ。クスッ
今まで我慢してたんだもんね。
と、後ろを振り向きキスをした。
初めて見るこの人がいっぱいだわ。これからもっといろんなあなたに出逢えるわね…
また一人考え事ですか?どんな良からぬ事を考えておるのか…これだから、貴女から目が離せないのですよ。
……ウンスもまた、不安は全くなくならなかった。
このまま歴史から逃げ切れるかしら?
王宮に戻ったら無事に生活出来る?
本当にその辺の所がわからない…
ここはパラレルワールドなのかしら?
昔映画で見たわ。
もう一つの同じような空間…でも同じだけど少しだけぼたんがかけ違っているようなそんな世界…
過去に行った未来の私の時は、(あー複雑!)チェ・ヨンも王様も心を壊し、王妃様は亡くなる…
それでどうやって私は天門をくぐったの?
チェ・ヨンがおかしくなったのを見ていたわけよね?あの時は今日の20日位前のはず…その間にチェ・ヨンは心を壊してしまったのね?きっとそれで守れないと思い嫌がる私を無理に帰そうとしたのかしら?で、私が意地で戻ろうとして天門をくぐったらここより100年前に?
でも、さっきの夢では、死にかけているあなたを残しと…どういう状況だったのかしら…それも変わってる?見逃してくれるの?運命は?
はぁ…いまは運を天に任せる…?
いやダメダメ!その天が一番信用ならないの!
チェ・ヨンに任せましょ。
などと、いろいろ考えているうちに
ウンスはチェ・ヨンに身を任せチュホンの上で眠ってしまった。
眠ってしまわれたのか?
まぁ無理もない。昨夜は毒を飲み高熱に侵され、今宵は無理をさせてしまった…
少しチュホンの歩みを緩め、ウンスを毛布を包み直し、紐を取り出すとウンスと自分を一つに結わく。もし敵が来た時、剣を使えぬと困るのでしばしご辛抱を。もちろん今は右手でしっかりとウンスを抱きしめ、ウンスを起こさぬよう先を急ぐ。
その少し前…何者かがウンスとヨンの宿をかなり遠くから気配を消して近付いて居た。そして出立したのを見ると、その黒い影達は何方向かに別れ、二人が出た後を気配も消し、静かに静かに追った…

