ー余は、幼いからよくはわからぬが、これだけは知っておる。徳成府院君…
ーはい、慶昌君様
ー私の知っているヨンは、反逆など企てぬ。
慶昌君様の目から涙がこぼれ落ちる…誰あろう…チェ・ヨンその人のために…
ー確かですか?人とは己の利益と命を守るためなら手段を選ばぬと…
まだお分かりになっていないようですね。
チェ・ヨンその人がどれほど信頼できるとしても…
言い終わる前に慶昌君様は言葉を続けた。
ーヨンは怠け者でそんなことが出来ないのです。
どうしたらヨンを諦めてくれるだろうか…いまの余にはヨンしかおらぬ…。
余はなんとしてもヨンを守らねば。
ー怠け者だからですと?
ー余の知っておるヨンは、謀反など企むほど懸命なやつじゃない。
本当です。
溢れる涙を拭おうともせず、切々と徳成府院君に訴えた。
ーふっ、ですが今はチェ・ヨンが謀反人かどうかは大事ではありません。
チェ・ヨンを反逆罪で殺すか…生かすか…
それだけなのです。
よほど、チェ・ヨンが大事のようだ。
人が大事にしているものほど欲しい…
やはり殺さずに何とか手に入れたいものよ。
ーヨンを、徳成府院君に跪かせれば生かしてくれるということですか?
余にはもうヨンを救う力はないのか…
慶昌君様は怖かった。目の前にいるこの話の通じない男が、途方もなく怖かった。
しかし、その気配を億尾にでも出せば、そこをまた攻め込まれる。心を強くせねばと考えていた。
ーそうです!簡単なことなのです!
やはり、ただのガキではないな。
ーされど、ヨンはそうしないでしょう。
ーなぜです?
ー言ったでしょう?怠けているって。だから自分が嫌いな相手の前で物乞いするはずがない。
あやつはそう言う奴なのじゃ…
ーそうでしょうか?ふっ…
チェ・ヨンも人の子、己の命の前ならなんだってしますよ。そのためなら、慶昌君様や王様でも裏切るでしょう…人間とはそう言うものなのです。
誰であろうと自分の命が一番大事であろう。もし、チェ・ヨンがそうではなく、他人のために命を捨てられると言うなら…
欲しい…何に変えても欲しいものよ。
一方、チェ・ヨン達はまだテーブルについていた。
ーもし、慶昌君様が隊長に命じたらいかがされる?王座にもどりたいから力を貸してくれと頼まれたらどうする?
もう少し、引きとめねば。
ー聞かなかったことにします。
この男、何故今そのようなことを。
その真意はなんだ?
ーはっはっ、もう聞いてしまったではないか。だから考えてみなさい。
ー剣を振り回すだけの武官に過ぎないが、頭は持っておるつもりです。このような状況でそんな質問に答えねばならぬのですか?
なんか、ヤバイ雰囲気ね…時代劇で見たわ。確か、王様が在任中に次の王を隠れて決めようとすること自体大罪で、死刑にされてたわ。それこそ、首をチョンって…
それに、忘れてたけど、慶昌君様はあの屋敷から一歩も出られない。出たら罪を問われるとサイコが言ったんじゃない!
ご飯が喉を通らなくなって来た…
ー私とて命がけでそなたらを隠しておるのだ。こんな質問にさえ答えてもらえぬとは…
嫌~!ちょっと二人で睨みあわないでよ!
私には関係ないんだからね。着いてこいと言われサイコに着いて来ただけよ!
どうしよう…そう言えばこの状況ってまずいのよね。私はどのみち首を…?
オットケ~…
徳成府院君が懐から小瓶を取り出し慶昌君の近くににじり寄る。
慶昌君様は蛇に睨まれたカエルのように動けなかった…
ーこれが何かご存知ですか?
慶昌君様は首を振る。
ー一口飲んだら五臓六腑を燃やすと言う火苦毒です。首から五臓六腑の隅々までゆっくりと燃やして行きます。ゆっくりとね…ふふ
その激痛に比較できるものはないと言われています。
この毒をチェ・ヨンに渡してこう言ってください。
この毒を飲んで死んでくれたら、キ・チョルは「お前だけに罪を問い、余は助けると約束した」と…
そうしたら奴は従うでしょうか?試したくありませんか?
私が試したいのだ。どうするチェ・ヨン…はっはっはっ 何やら楽しくなって来たものだ。
ヨンは、余のために何もためらわずに毒を喰らい死するであろう。そんなことで余が救えるのかと問うてくるに違いない。笑うて聞くだろう。些細なことのように…
どうすればヨンを助けられるのじゃ…
まだチェ・ヨンはしつこく聞かれて居た。
ー慶昌君様が復位の話を持ちかけられたらどうなさる?
ー慶昌君様を斬るまでです。
ーゲッホゲッホゴホ
マジで言ってんの?あんなに幼い慶昌君様を斬る?しかも二人は兄弟みたいに仲が良いのに!っ全くどんな世の中よ!斬るだの、首を晒すだの…裁判もなし?こんな世界、早く抜け出さなくっちゃ!天門とやらが開かなくちゃいけないのよね?いつよ~!いつなの?でもここで言ってても始まらない。あの場所で待ってないと開いた事にも気付かないんだから…
ー私は王様を守る迂達赤です。陛下に逆らうものは誰でも斬るのが私の務め…
慶昌君様は、そんなことは考えておらぬ。この男、なぜ?
私の任務もあと少しで終わる…これを終えたら医仙を天門に送らねば。
そう考えた時、また胸にチクリと痛みが走った…
おはようございます。
今朝も3時まで花より男子を見てしまい…目の下には
さんがー(笑)
さんがー(笑)このシーンは好きじゃなく、なかなか箸が…いやキーボードが押せませぬ…
もう少しで消えた小さな命の章は終わりです。ヨンの目が切ないなぁ…
では今日も素敵な一日を!
アンニョン


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