細く、力を入れて抱き締めれば折れてしまいそうな柔らかな体…
近づくと更にウンスのなんとも言えぬ良い香りが強くなる。
ウンスは眠りながら顔だけ擦り寄ってくる。まだ寒いのだろう。
吐く息が暖かくくすぐったい。
自然と笑みがこぼれ、優しく髪に口づけた。
これからは、毎夜イムジャとこのように眠れるのだ…俺はなんて幸せ者なのだろう。今まで、いつ死んでも良かったが、これからは「正面突破」はやめ策をねりイムジャと王をお守りせねば…
ー父上…“見金如石”…“黄金を石のように思え”との教えを守り生きて参りました。
金も女人もこの命さえも興味がなかったのです。あの時より…
そんな私にこの方が蹴りを入れてくれました。“生きろ”と…
父上の言わんとする事がわかりました。
ー初めは小さな欲でした。
この方の笑顔を遠くから見ていたい…
この方のお側でお守りしたい…
髪に触れたい…
俺以外の誰にも触れさせたくない…
抱き締めたい…
口づけをしたい…
この方を天界に帰したくない…
一生守るから俺の側にいて欲しい…
ー父上、人の欲深さを知りました。何も欲した事のないこの私が…
ひとたびだけ、お許し頂きたい。
このお方だけ、欲しても良いでしょうか?
後には何も入りませぬゆえ…
父上にも会うて頂きたかった。とても美しく清らかで強く、何事にも臆する事のない子供の様なお方です。
何度となくご自分の命をかけ私を守り、天界を捨て私と共に生きる道を選んで下さった…まさに天女です。
人は良くこう言います。
ー恋い慕う者のためなら死ねると…
私は違います。この方をどんな荒波からもお守りするため、何事があろうとも生きて参ります。
父上…私にはまだまだやらねばならぬ事が多いようです。そちらには行けそうにありませぬ…
ー突然ウンスが息も荒くうなされていた。
「イムジャ、イムジャどうしましたか?また、怖い夢でも見ましたか?」
「イムジャ!ウンス!ウンス!」
ーチェ・ヨンは起き上がり、ウンスを抱き起こした。







