目が覚めると慶昌君様はまだ良く眠っていた。
あの人も眠っているのかしら?
声をかけてみた…
『ねぇ』
と、言うとすぐに目を開けて私を見た。
ーこの人は神経を休めて寝ていないのだ。今も私達を守ってくれている。
『昨日から少しは眠れたの?』
返事をせずそっぽを向く。
ー私の事などお気になさらず寝て下され。
私は慣れておりますゆえ…調息をし、気を整えれば何日か、眠らずとも平気である。
『全くほとんど寝てなかったわけね?その状態で戦って~馬に乗って~守って~…』
はぁ~~少し神経を休めて眠って欲しいんだけど…て
あっ!
ウンスは何か思い立ったようにチェ・ヨンの横に座る。
びっくりしてウンスの顔を見、柱の方にダルそうに移動した。
ーまた、あの方の香りが…本当に行動が理解出来ぬお方だ。
ウンスはヨンをフンッと軽く睨みつけながら、またもや横に座った。
『何をするんですか?』チェ・ヨンは唖然としながら聞いた。
『ここに、寄りかかって寝て。私が守ってあげるから安心して寝てね』
と、ウンスは自分の肩を叩いた。
ーまたこの方は何を言い出すのかと思ったら…はぁ…
『男に向かって女人の肩に寄りかかれと?』
『弱ってる人に元気な人が肩を貸すだけ。男も女もないでしょ?どうぞ、さぁ寝て!』
そこから、ウンスはしゃべりっぱなし…
ーだって、本当は緊張してるのがバレちゃう…
『あなたの部下たちに聞いたんだけどね、寝るのが好きなんですってね。』
そこからウンスはトクマンのモノマネをしながら
『3泊4日位はずっと眠っています。起きてからは4日分の飯を食べます。そして、また眠ります。その点はうちの隊長はすごいです。』
ーこの方は、私が肩で寝るまでこのままなのであろうか…余計に寝れぬと言うのに…笑いたい気持ちをチェ・ヨンは抑えた。
『だから、意地張らないでさ。寝不足だと、食欲も集中力もなくなるし、うつ病までなるのよ?だからね、さぁ…』
こてん…とチェ・ヨンがウンスの肩に頭を預けた…
ウンスはそーっと脈を取り、おでこに手をやり熱が出ていないか、確認した。
ーうん、大丈夫そうね。熱はないし。こんなに回復力のある人が死にかけたなんて…
ゆっくり寝てね…少しの間だけでも私が守るから。
『んー血の臭い…』
ーチェ・ヨンは薄目を開けた。手に触れられた時、思わずビクっと動いてしまうかと思ったのを我慢した。おでこに手が触れた時もだ。柔らかくしなやかな指。握り返してしまうところだった。
…頬をあの方の髪がかすめる。柔らかな肩で花の香りに包まれ、本当に眠ってしまいそうだ…
だめ…だ… 眠っては… お守りせねばならぬのに…この方はなんと不思議なお方だ…
チェ・ヨンはあっと言う間に深く眠りに落ちた…ここ最近なかった。夢も見ず深く深く眠りについた……
ーフフッほんとに寝ちゃった。さっきは、起きてたわね。分かるわよ、その位。
この人を守らなければ…
なんでそう思うんだろう。。。
こんなにも強い人を守らなければなんて…
チェ・ヨンの顔を覗き込みながら考えた。
この人が教科書に出てくるチェ・ヨン?
ほんとなのよね?かなりの歴史的人物…
もし、ここ高麗でこの人と恋に落ちたら?私も偉人さん?
現代では、ただのアラサー美容整形の医師…
でもこの高麗では?私の外科的技術を持つものは一人としていない。
お腹を切り開いて手術するなんて、この時代では考えられない事よね?
私、ここに居ていいの?
この人と恋に落ちるなんて…ダメよ、ウンス。そんな事ありえないわ…
ーウンスは、そっとヨンに頭を預け、眠らないように考え事に集中した。

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