
「空気」と「世間」 鴻上尚史 講談社新書
さあ早速ですが、みんなも「空気」や「世間」とはどういうものか述べてみよう。(5分)
「空気」を窒素と酸素と言った人。駄目です。もう一回。
簡単でしょ。毎日、その中で生きているんだから。あと3分考えよう。
う~ん、うまく言えませんね。
会社、地域活動、商店街活動、それに付随するもろもろの会議。
「空気」と「世間」に毎日出くわしますよね。その存在を感じますよね。
あるのは分かってるのに、目に見えないこれは何なんでしょうか。
こういったことを真剣に考えた人がいたのですね。
この本は、阿部謹也さんの「世間とは何か」、「日本社会で生きるということ」、「学問と世間」や山本七平さんの「空気の研究」を土台にして、「世間」や「空気」とは一体何なのかを、分析して、体系的にのべています。その上に著者の視点も加えています。
あまりにきれいに書かれているので、身も蓋もない感じもありますが、頷けます。
霧がかっていた視界がはっきりと見えた感じがします。
頭の中が整理された感じといえばいいでしょうか。
「空気」とか「世間」は、こういう風にできているのですね。
分かると今まで怖かったものが、ちょっと怖くなくなったりします。
「こんなこと言ったら場を乱しちゃうかな」など考えて、「会話の方向」や「雰囲気」を考えて躊躇する人(私も)は、一読の価値ありです。
恐れなくてよい空気(世間)の存在を感じることができるようになります。
また、著者によると現代は「壊れかけの世間」と、そこから発生する「空気」、それとは関係のない「社会」から成り立っています。(詳しくは読んでください。)それをどう繋いで生きていくかに対して、最終章に提案される「複数の共同体にゆるやかに所属する」という選択は、「生きにくい」と感じられる生活を前向きに生きる上で、非常におもしろいポイントだと思います。私にとって、読書会もその共同体の一つになっていると思うので実感がわきました。
それにしても、こういうのを学問にしたり、真剣に解き明かしたりするのはおもしろいと感じました。まあ、知らなくても生きてはいけるので特別困らないのですが、知ってると生活が楽しくなりますよね。本を読む楽しさってこういうところにあるのかもしれないなと感じました。ぜひ一読。