他の士官組の成績も存分なものだった。
 真理は知能検査とやらを受けて高い成績を上げていた。ま、千里眼常時発動なら知識問題余裕なのは解るが、知識が問題にされず単に処理速度が問われる試験、これはさすがの知性だ。おれ直属の情報参謀官にされた。
 涼平は神官のくせして格闘試合をされ、素手の組み手で強靭な武道家を次々とたたきのめしていた。前線司令(将官ではないので司令官とは呼ばない)に抜擢された。
 逢香は戦術シミュレーターを受けたとか。架空の大軍を指揮し、初めてのトライというのに互角の布陣から損害軽微にして敵陣を撤退に追い込んだ。無用な殺しは避ける、というスタンスが評価された。作戦参謀官職を任された。
 時雨は……シミュレーターで宇宙突撃艦の操舵砲撃手を任されていた。ってなんのこっちゃ! とにかく縦横無尽な暴れまわりで、たった一隻で味方艦隊から猪突し敵艦の群れを灰塵と化していた。時雨も前線司令。
 ゆいいつ千秋だけは体力が回復せず、始終眠っていた。ケネローからは評価されなかったが、彼女の超能力は世界を思うままにできるのに。おれたち士官組ならびに師団の将軍は千秋しかいない。それをみんな説明したから、繰り返すが副司令官職に就かされた。
 試験外のことだが、この間に。ハムの星は……兵器のメンテナンス要員として、恐ろしい技をふるっていた。技術将校の地位となっていた。ウサ・ロップたんは……お笑い芸人としてデビューしていた。本人はアイドルのつもりらしいが。
 うやむやのうちにこのウサギは戦意高揚のマスコットとして、寒い……失敬、ハートフルでクールな笑いを兵士に届ける役を担った。ハムはシンセを使いBGMにエフェクトをかき鳴らしている。アイドルは千秋だな、いまどき見た目幼い萌系の方が受けるのだ。
 真理も参加すればいい線行くと思うのだが、そんなお祭りごとには観客として楽しむのがこの女ヲタ少女だった。
 こうして万全の準備が整っていたが、自然の力の前には無力と思い知る。冬将軍か……
「どうする、みんな? この雪では……」
 珍しく弱気に語る逢香だった。暖かい宿舎内の会議室で。
「ケネローご自慢の機甲戦闘機隊・戦車隊が出撃できないだと?」
 涼平は息巻いていたが、おれは上質なスピリッツにまったりと酔いながら皮肉った。
「問題は無い。気象庁に連絡して、天気を変えてもらう」
 やれやれと真理は言う。
「元ネタはハインライン『夏への扉』か。この世界に気象庁は無いわよ」
「なに論点がズレた間抜けな会話しているのだ? 敵は悪鬼なら退散するが……妖術師の生ける屍の群れはそうはいかないぞ」
「打って出るだけが戦いではないでしょう? こたつで丸くなりたいところね」
 ハムがキューキュー訴えていた。
「物騒なこと言わないでくださいよ、猫が出るなんて……」
 と、ここでこのハムのスターの首筋に何者かが噛みついていた!
「ああ、人殺し~~ぃ!」
 ハムが叫んでいるが、何故かこの光景は何回も繰り返し起こったようなデジャヴを覚えるのはおれだけか。
 って、まさかの猫!? 二足歩行し、身軽な旅用の衣服を着ているが。逢香が優しく割って入る。この会議室によく入り込めたな。すると大変な能力の持ち主だ。
「止めて! 貴方ヒューキャットね。おなかが空いているなら、いろいろこのハムちゃんが調理してくれるわよ」
 ハムちゃんが、ではなくハムちゃんを、の方が適切な表現に思えるのはおれだけだろうか。とにかくふさふさの尻尾をした小柄な猫少年は自己紹介した。
「僕の名はメリル。メリル・ウィザーというけど……妙なところへ迷いこんじまったなあ。リンどうしているかな」
「メリルくんは細剣、フォイルの使い手ね。腕の立つ戦士は歓迎よ」
「僕は軍なんかには入りませんが……目下当てもないし、お供させてもらいますね」
 うやむやにマスコットキャラが増える一行だった。
 
 
公星 すまいるまいるさん

ロップたん にゃんたれママさん

メリル 初孤羅さん