☆現代人に「虚」はいない? 虚も実も同時に存在する方が多いです
先日、Twitterで質問をいただきました。
鍼灸師の方からで、師匠から「現代人に虚はいない」と習ったのだけど、まつもと先生はどう思いますか?という内容でした。
うーん。
わたしは、虚はあるという前提で仕事をしていますね。
質問をよくよく読むと、「虚証」という表現をされてたので、いわゆる日本漢方流の、
「体質のパラメータ」としての虚実
という言葉遣いなんだろうなと推測しました。
ご質問くださった方の師匠の先生は、
「現代の生活は邪気を生みやすく、それが経絡や五臓に詰まって病気を起こす」
とおっしゃってたそう。
鍼灸は、邪気による経絡・臓腑の滞りを取り去り、順調な流れを回復させることがとても得意な手技です。
師匠の先生は、それはもう、たくさんの経絡の詰まりを、治して来られたんだと思います。
翻って、中医学の言葉遣いはどうか。
中医学で虚実は、
虚……(あるべきものが)足りない状態=不足
実……(あってはいけないものがあって)邪魔されてる状態=有余
という意味です。
全体の体質を考えるときにも使いますし、症状を起こしている部分に対しても使います。
一般的に、現代人は、
「虚実錯雑(きょじつさくざつ)」
の状態になっていることが多いです。
例えば、よくあるのが、
「ストレスで臓腑の機能が低下して、その結果胃腸の消化能力が落ち、めまいがする」
というようなケース。
これ、中医学的に分解して見てみると……。
●ストレスで=肝で気滞(実)
●胃腸の消化能力が落ち=脾胃の気虚(虚)
●老廃物が溜まり=痰湿(実)
さらに、めまいに直結する部分を解説すると、気滞や陰陽失調が「内風」を引き起こし、痰湿が吹き上げられて竅に詰まる(実)という仕組み。
こんな風に、分解すると、「虚」の部分と「実」の部分が組み合わさって症状を形作っていることが多いんですよね。
ここまで分解できれば、
「じゃあ、内風を吹き消しながら痰湿を片付け、これ以上痰湿を発生させないように脾胃の負担を減らし、そもそものストレスを低減させよう」
と「治し方」を組み立てられます。
治し方を組み立てたら後は、どこまでをまず漢方薬でやるか、どこからは養生指導で症状の出やすい生活パターンを解消するか、お辛さやご予算で選択していくワケ。
……てな具合に、「不足してるとこ=虚」も「邪魔モノの存在=実」も、両方あることが多いんですよね。
あと、現代人に虚はないのであれば、よくあるお悩みの「いくら食べても太らない」も存在しないことになるかな。
これも、一旦脾胃に負担をかけない食べ方をして、一時的に体重を落としても、胃腸の消化吸収力を回復させると太れます。
多少のことがあっても40Kg切らないようになれば、かなりラクに生活できますからね!
珍しく、異文化の方からご質問をいただいたので、脳内が活性化しました。
ありがたく、こちらで解説させていただきました。
単純に、言葉遣いの問題だと感じましたよ。