自分の引き出しを使い切ったことに気づくまで、そう長くはなかった。
似た様な写真を、延々と撮り続けても仕方ない。
写真を見るとき、背景が変わろうと、やはり人物に目が行く。
とっとの路上ライブは毎日、違う街に繰り出して行っても
様々な制約から、撮り位置は同じようになってしまう。
モデルを被写体とする撮影なら数をこなしてきたけれど、
路上ライブの撮影はゼロからのスタートだった。
路上ライブで「作品」を撮るのは無理だろう。
私は、まずそれを考えた。
だから記録性を重視する傾向で撮っていた。
そして壁にぶち当たったのだった。
ぶち破るには、視点を変えなければならない。
かつて、写真の師にいわれたことを思い出してみた。
「高みがあれば昇ってみろ」
私は、靴を脱いでベンチの上に立ってみた。
およそ怪しげな行動であることは自覚している。
演奏を始める前の、空気が張り詰めたとき、
ほんの僅かな時間で数回シャッターを押した。
まだ違う。
しかし、なんとなく出口が見えた気がした。
その先は、これまでと違う道だった。
