霧雨が降り始めた。
それと気づかぬはずもないのに、とっとは歌い続ける。
たいした降り方ではなかったが、道行く人々のなかに傘を差す人も見え出した。
足を止めて歌に聴き入る人たちは、誰もが濡れるがままに立ち続けている。
常連ファンの一人が、アンプに傘をかぶせた。
演奏は続く。
予報での降水確率30%。
とっとも路上に出るべきかどうか迷ったらしい。
ブログでの告知は、開始1時間前だった。
「きょうは誰も来ないかと思った」
開始前の準備中に、とっとはそういった。
蓋を開けてみれば、常にも増しての大盛況だ。
たまたま足を止めた知らぬ同士が、曲の合間に言葉を交わす。
やがて撤収の時間となると、その知らぬ同士が、再会を約束していた。
「今度はライブハウスで」と。


