一瞬
時が止まったような気がした


(俺、流鬼とキスした?!)


一気に赤く熱くなる顔

流鬼を見ると
俺に負けないぐらい赤くなってて


『ー…ぷっ』


「何がおかしぃんだよ」


『だって、流鬼顔真っ赤なんだもん』


「お前だってそうだろ」


『キスしたのは流鬼じゃん』


「うっ…」


仕方ねぇだろ
キスなんてしたことねぇんだから…


ボソッと聞こえた言葉に俺は何だか嬉しくて

あぁ
俺も知らないうちに流鬼に恋してたんだって気づいた

流鬼と話せなくて寂しかったのも

2人乗りしてドキドキしたのも

ぜんぶぜんぶ流鬼が好きだったから


『そっか、そうだったんだ』


「あ??」


俺は嬉しくて流鬼に抱きついた


「な、何だよ戒?!」


『俺、流鬼のこと好き
大好きっ』


「お前の好きと俺の好きは…」


『一緒だよ』


そう言って
今度は俺が流鬼の唇を奪う


『流鬼にキスされて
俺、嬉しかった
もっとしたいって思ったもん』


「まじ?」


『うんっ』


俺たちは何度も何度も子どものようなキスをした

ほんとはもっと欲しいけど


急いでも仕方ねぇしな


あと少しの間は
可愛い恋をしよう

でも
俺は我慢出来ねぇ男だから

すぐに大人の恋をさせてやる
「ひつ帰ろー」


『かえらない』


「え…??」


咲人何言ってるの?
咲人には彼女がいるじゃない


彼女がいるのに
私なんかと帰っちゃ彼女が可哀想だよ…


『咲人には他に帰る人がいるでしょ』


「他に?誰のことを言ってるの?」


咲人の目が冷たいものに変わった

怖い…
怖いけど…


『だって…
咲人、昨日女の子と…
彼女と、帰ってた』


昨日…
ひつ見てたのか…
「あの子は彼女じゃないよ」


『で、も
でもいや…
さきが私じゃない女の子とかえ…あれ?』

私、今何を言った…?
咲人が私以外の女の子と一緒に居るのが嫌…

どうして??


「ひつ、それって


やきもち??」


『え…』


「俺がひつと帰るのはよくても
ひつ以外の子と帰るのは嫌なんでしょ?」


『ごめ、私なんてわがまま…』


「ううん、
俺嬉しい」


『どうして?』


「だって
ひつが俺を恋愛対象として見てくれてるから」


『…あ、うぅ』


「俺はね、ひつのことが好きだよ」


『さき、と』


「ひつはどうなの?」


『私は、』


私はどうなの?
小さい頃からずっと一緒にいた咲人

隣にいることが当たり前で…
もし咲人に彼女が出来て
私の隣にいてくれなくなったら…


嫌だ

この気持ちは恋なのかな…


『私、咲人のこと
す、き…』


「嬉しいっ」


『ちょ咲人!!』


長い時間待ったかいがあった
やっとひつが俺のものになった


「じゃあ帰ろっか

ひつ」
流鬼と2人乗りした時から
ドキドキが止まらない


あれから
流鬼を見ると顔が火照って
声も震えちゃうし


俺、変だよね…


せっかく前みたいに流鬼と話せるようになったのに


どうして?


神様のいじわるっ


「あれ、戒が屋上に居るとか珍しいじゃん」


もやもやした気持ちが嫌で
屋上に逃げてみれば


(ここサボり場所だった…)
『え、や…ぅん』


「なんだよそれ」


流鬼は笑いながら
俺の隣に座って煙草を吸いだした


(近づかないで…
顔が熱くなって)


「戒…どうした?」


俺の異変に流鬼が気づいてしまった


「顔、赤ぇけど熱でも…」


額に伸ばされた手を俺は振り払ってしまった


『ね、熱なんて
ないから…』


「どうした、俺何かしたか?」


『ちがっ…
俺、少し変になっちゃ、』


どうしよう
涙が出てきちゃった…


「俺に言ってみろよ」


優しい顔で笑う流鬼


『俺、流鬼と会うと、顔赤くなるの…』


「おぅ」


『声だって、震えちゃうし…』


「……」


『今だって
心臓がドキドキして潰れちゃいそうでっ』


「お前…」


どうしよう
流鬼がひいてる…


『ご、ごめんね…』


「何謝ってんだよ」


『だってひいちゃったでしょ…
困るでしょ…』


「困らねぇよ」


俺だって
お前に会うと心臓が潰れそうなくれぇ苦しいんだからよ


『え…』


「お前は俺が好きなんだよ、戒」


『好きだよ…?』


「違ぇよ、
俺の言ってる好きはなぁ…」










流鬼の唇が
俺の唇を塞いだ
「ひつごめん!!

今日は先に帰ってくれる?」


『うん?』


思わず返事しちゃったけど
咲人、私に謝る必要ないよね…

毎日一緒に帰るわけでも
ましてや付き合ってるわけでもないし

変な咲人…







「モテる男は大変だな」


「うるさいよ新弥」


本当はひつと一緒に帰りたかった

この前の雨の日みたいに
また手が繋げたらいいなって

なのに

げた箱に入れられた一通の手紙


ー今日の放課後
教室で待って居てください


どうして放課後なんだよ
昼休みとかに片付けて欲しかった

どんな子に告白されたって答えは同じ
相手はひつでなくちゃいやだ

いつもと同じ言葉を言うためだけに
教室に残る

柩を独りにして


「咲人君のことが好きです

付き合ってください!!」


…はぁ
何回も何人にも言った言葉


「ごめん、他に好きな子が居るんだ」


「ー…っっ
それって、柩さん?」


「そうだけど?」


「そっか…

ねぇ、最後に一つだけお願い聞いてくれる?」


「例えば?」


「今日だけ、1回だけでいいから一緒に帰って」


めんどくさい女


「わかった」




学校の帰り道
ノートがきれたことを思い出して本屋に寄った

ついつい雑誌も立ち読みしちゃって
店を出た時には辺りは薄暗くなってた


『遅くなっちゃった…』


人知れず呟き前を見ればバス停に佇む咲人


『あれ…』


バスなんて乗らないのに…


隣を見れば
知らない女の子


ズキズキ


『咲人彼女…

だから帰れないって』


ズキズキ
ズキズキ


見たく無かった

私は見ていられなくて
家に向かって走った
帰りも送ってってやる

流鬼の言葉に俺は甘えることにした


『おまたせっ』


「おせぇ」


『授業さぼる流鬼と違って俺はまじめだからね』


「はいはい

早く帰ろうぜ、腹減ったわ」


『もう』


自転車の後ろにまたがり
俺より少し背の低い流鬼の肩につかまる


『らくちんらくちん』


「そりゃお前は乗ってるだけだもんな」

『感謝はしてるでしょー』


「どうだか」


制服越しでもわかる流鬼のほてった体

頑張ってるんだろうなww


視線を外せば
目いっぱいに広がる橙色


『うわあ…
ねぇ、見て見て流鬼っっ』


「う、わっっ
動かすなよ戒!!」


『ぅわあ、ごめん

でも見て、綺麗な空』


夜と昼の間
空一面を彩る暖かい色


「だな…」


『でしょ!!

夕日に向かって走るとか
青春って感じだね』


「だせぇ」


まぁでも
お前となら青春とやらをやってみるのもいいかもな