ラピダスは成功するか? | spider-thread-21のブログ

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米中の覇権争いに絡み安全保障の観点からも先端半導体技術の囲い込みが国家の重要事項と位置付けられています。

 

そんな中、日本ではラピダスが線幅2ナノの最先端半導体の分野への投資を進め日本の半導体復権を狙っていると報じられています。

 

さて、投資家としてこれは「買い」なのか否か、少し考えてみました。

 

先端半導体分野(3ナノ)の世界シェアは台湾が9割以上を占め、次いで韓国が食らいついている状況になっています。日本のシェアはゼロ、米国も4ナノ前後ですがほぼゼロですね。インテルからCPUでシェアを奪っているAMDはファブレスで台湾のTSMCに生産を委託しています。これはエヌビディアなど米国の半導体事業モデルの典型です。翻って、自社で賄うインテルはビジネスモデルの転換が遅れてしまい、資金力を武器に自社での技術確立を目指していますが、米国内で生産技術は確立されていない状況です。オハイオ州で進める新工場の進捗も当初の稼働予定である25年が26年以降に遅れています。TSMCでさえ、二つのアリゾナ工場の稼働もそれぞれ25年、28年と遅れていますからTSMC創業者のモーリス・チャン氏が言うように労働者倫理などを見ても米国でモノづくりを進めることはお金だけでは難しそうです。

 

中国の半導体メーカーは急速に技術力を向上させており、自由にしておけば韓国も米国も間もなく追い越される状況でした。それが米国によって中国規制が厳格化されたことで救われた形になっています。インテルは今年3月には85億ドル、先日には追加で30億ドルの補助金が利用できる見通しとなったので(合計で約1兆6千億円強)、正に国家戦略として成功を迫られています。ドイツやポーランドでの投資計画も2年間ほど停止することが決められました。アリゾナやオハイオでの投資成功に専念するということでしょう。

 

一方、最先端技術を有している韓国は米国での補助金も手に入れテキサスでの投資を進めています。韓国は政権によって中国に近づく誘惑を抑えられなかった時期もありましたが、結果的に同盟国である米国の政治的な恩恵を受けています。その韓国のサムスンは半導体投資が年間で5兆円規模となっています。それでも最先端の3ナノのプロセスは安定しない状況となっています。半導体の世界は先端半導体量産技術を確立すれば先行者利益が莫大ですが、産みの苦しみは大きな忍耐を要するのです。

 

日本の微細化技術は40ナノ以上の水準で止まってしまいました。巨額投資が必要となる半導体市場で事業転換がコングロマリット化した大企業の一部門の中で難しかったからです。国際分業の発想についてもモノづくり神話が幅を利かす日本では難しかったため、メモリーだけでなく様々な先端半導体デバイスの世界でも敗れ去りました。スマホなどの失敗と同じ構造ですね。半導体分野で唯一に近い形で残ったのが、先端半導体プロセスを必要としないパワーデバイスやソニーのCMOSセンサーとなりました。パワーデバイスはアナログな世界なので日本の状況に合っていたのですが、独インフィニオンには世界シェアなどで大きく劣っています。ですから三菱電機やソニーの成功は戦略的な成功というよりも残存者利益に近いと思います。比較上はソニーはその幸運をうまく事業戦略につなげましたが、三菱電機は少し遅れを取った感があります。

 

さて、先端半導体の分野で勝ち残るためには、ざっと考えただけでも以下の条件が整うことが必要だと思います。

 

① 国内環境(モノづくり文化とエコシステム)

② 国家戦略(補助金、規制関連)

③ 人材確保(開発人材、経営人材、営業人材、異文化間プロジェクト管理能力)

④ 国際分業

⑤ 資金力

⑥ 市場(顧客基盤)

 

①については世界的なサプライヤー(半導体製造装置、超純粋装置、素材メーカー)などを日本は有しています。②の国家戦略はやっと最近動き出したのですが、国自体が財政難なので先の見通しが難しい。本当に半導体に巨額支援を継続できるのか。③の人材は少子化の影響もあり不足しています。しかも、モノづくりの現場はある意味でブラックな部分がありますが、ハングリーな台湾や韓国の人材と戦えるかは分かりません。④は経営力と人材に影響されますね。今までの日本はレーザーテックなどの例を除くと国内至上でコミュニケーション能力が限定的です。⑤の資金力は心もとない。ラピダスの量産には残り4兆円の資金を確保する必要がありますが、成功するかどうかの保証がないなかで一般企業が多額の出資をするのは難しいでしょう。⑥の市場性は微妙ですね。僕なら慈善事業ではないので量産技術が証明されているTSMC国内工場に発注します。そもそも日本には半導体デバイスでファンドリーの最先端工場を埋めるだけの市場シェアを持つ企業はありません。はっきり言って、ラピダスの2030年の利益1兆円は夢のまた夢でしょう。

 

一部ではTSMCは高い水準の品質を確立するまで量産移行しないためスピード感に欠けるというコメントもありますが、全く間違っていると思います。彼らは非常に優秀で最先端の分野での進歩が最速ですし、レガシーの技術もしっかりと対応するので、顧客としては信頼できるサプライヤーです。ラピダス社長の小池氏は過去の消化不良の思いからか、標準のバッチ式ではなく、枚葉式の装置活用で量産化へのスピードが担保できると言っていますが、僕から見ると経営者のこういう思い込みは怖いですね。IBMとの技術提携も不思議です。経産省も官僚的な責任回避のPlan Bなのかも知れませんが、TSMCへの支援をして熊本に誘致したりしています。TSMCをつなぎとめて投資を継続してもらうには工場を埋めなければいけないでしょうね。変なプライドを捨ててTSMCに頭を下げ続けるのが順当ですが、自国企業の製造技術にこだわることを捨てることは国家の威信にかかわるのかも知れません。

 

ということで、ラピダスは買いか?となると僕は買いません。少なくとも上の条件に前向けな展望が感じられなければ。インテルの場合は①と③が欠けています。ラピダスは③、④、⑤、⑥が欠けています。ラピダスの量産が難しい局面で米国が日本を助けてくれるでしょうか。TSMCに頼れって言いそうですね。勿論、インテルが大成功すればインテルに頼れって言ってくるでしょう。ラピダスは税金の無駄遣いにならないように、経営陣は不退転の覚悟で進まなければ、年配の現経営陣は懐が温まって引退でよいでしょうが、若い人たちには酷ですね。僕の予想が当たらないことを心から願っています。ちょっと辛口すぎたかも知れませんが、頑張って欲しいと思います。