ちいさな時計
腕を懸命に動かして
無機質な音を響かせる
《今日は少し遅いなあ
君もそう思うでしょう?》
君の声が聞こえるよ
部屋に ひとりの
静かな 世界で
君が言いたい言葉を
僕は知っているよ
あの子が帰ってくる
その瞬間を刻む声
『おかえり』
ちいさな時計
腕を懸命に動かして
無機質な音を響かせる
《君は知らないままなんだ
あの子はもう、帰ってこない》
君の声が聞こえるよ
いつまで経っても
静かなままの世界で
ちいさな時計
腕を懸命に動かして
無機質な音を響かせる
《君は誰を待っているの?
誰のために動き続けるの?》
君の声が聞こえるよ
ひとりと ひとりの
静かな 世界で
君が言いたい言葉を
僕は知っているよ
あの子が帰ってくる
その瞬間を刻む声
君はいつまでも待っていて
僕はそれを見ていた
ぐらつくドアノブが回る
向こう側から笑う声
『ただいま。』
20101123
英語で、時計の針 って hands of a clock だそうで。
そこから思いついた詞です。
改訂時には「僕」の口調を若干柔らかくしました。そのほうが雰囲気合うなと思ったので。
改めて「僕」って誰なんだろう、と考えた結果、本当に「あの子」を待っているのは「僕」なんだろうなと思いました。