渦中の日大問題ではあるが、多くの人にはもう事実は明白だろう。なので、その点については特に述べることもない。文春砲も今日、エネルギー充填120%で発射されるのを待つまでもなく、前監督とコーチは詰んでいる。あとはどう処理されていくかだけだ。大事な点はそこではない。
すでに指摘もある通りで、日大には危機管理学部というのがあるし、大学としての組織および指揮系統がはっきりしているが、それが全く不適切で機能していない。挙句に教職員組合から各支部長連名で学長および理事に具体的な項目をあげて対応するように声明文が上申されている。
大学、特に私学は会社の組織運営と大差ない。研究のスポンサーを探して研究室の運営費用確保に皆四苦八苦している。そのため講師陣の方が分が悪い。早稲田でさえ、一番いい立場にいるのは運営職員である。収入はよく、講師陣や幹部の任期制と異なり定年制である。前監督は運営幹部側だが、最も人心掌握の最高権力である人事権を握っている。事務職員含めて、刃向えば、抱えている研究者と学生を路頭に迷わすことになる。多くの人生を左右する。ふつうに社会経験のある人なら、どれほどの存在かは言うまでもないだろう。
一方、日大はご存じのとおり、日本一の学生数7万人を誇るマンモス大学(という言い方も古いか。今ならメガ大学?)で、当然、その統治もおそらく日本一難しいはずである。社員が7万人以上もいる会社は今はNTTと日本郵便ぐらいではなかろうか。中国は知らないが、世界的にもそんなに多くはない。正直に言えば、実質、統治不可能なレベルに思う。それが曲がりなりにできていたのは人事権を過剰に振り回してきたからだろう。
しかし、現代の会社なり、組織の運営はそれではもう立ち行かない。世間への評価、会社なら株価が運営の良し悪しと直結するようになった。そのことを知っていたのが、相手の関西学院大。会見を仕切っていたディレクターの能力の高さがずいぶん言われているが、大きな組織の企業ならあの職種の担当であれば当たり前にやっていることで、驚きに値しない。現時点では関学大の学長が出てくる段階ではないので、あれで済んでいるが、もっと重大な局面になった場合を想定して学長も準備しているはずである。ガバナンス(ガバナビリティではない)とはそういうことである。
日大側はもうそういう段階を越えている。もともと運営幹部が脳まで筋肉なので、外からの刺激に対して対応できる能力を持っておらず、体制的にも不十分なように思える。というより、もともとそういう外野のことを考慮する気がない。うるさいから被害の無い監督業だけ辞任でポーズを取ったという程度。当然の結果が現状だ。本来は学長以下、総力戦で対処しなければならないところを常務理事およびコーチの保身に舵を切ったままなので収めようがない。
おそらくは派閥や日頃の人事権への濫用もあって、事務方や教職員関係者からはこの際、この脳筋連中を一掃しようという内部でのまとまった動きが起きているはずである。その1つが先の教職員組合の動きである。さらに、文科省およびスポーツ庁としてもこの処理を誤ると自分たちにも大きな禍根を残すので、大急ぎで対応を検討して、助成金全面凍結で幹部一斉辞職要求を突き付けるところまで視野に入っているはずである。お前たちは管轄省庁として今まで何をやってたんだと言われないよう、国側のガバナンス事案になってきている。
さて、周囲の部分まで含めた長い前置きは終わって、ここから本題である。
今回の日大の問題では、前監督が常務理事であったことから(そもそも監督をやりながら人事の常務理事なんかまともにできる訳がない)、直接的に理事長および学長への責任追及の意見が出ているし、なぜ彼らは出てこないのかという意見が圧倒的である。これ自体は今のガバナンスの常識から言って当然である。
少し前に、TOKIOのメンバーの事件があった。同じ事務所ではさらに前にSMAPの解散問題もあった。これらにおいて、ジャニーズ事務所側は会見を開いていない。実質的な決定に加わっていないはずはないし、少なくともグループの意見を承認する側だ。でなければ事務所とは関係なしに彼らが会見なりで発言および去就を決めるということを放置していることになる。これらの問題のときに、「どうして、責任者のジャニーズ事務所は表に出て来ないのか?あんたがたは何のためにいるんだ?」という意見は大々的に言われた記憶がない。タレントたちに全部おしつけて、自分たちは矢面に立たないようにしていた。タレントへの同情を引き出して自分たちの運営の問題を見えないように隠したのだ。そしてそれに成功している。ここが問題なのである。中には、TOKIOについてジャニーズはうまく立ち回ったのに日大は失敗したなどというとんでもないことを堂々と書いている愚かなジャーナリストもいた。
日大もやっていることは全く同じ。しかし、これは世間が許していない。20歳になったばかりの学生1人に大人がよってたかって全責任を押しつけていると学生に同情し、日大のトップよ出てこい!謝罪しろ!という世論形成になっている。ジャニーズ事件のときにはそうはならなかった。女性中心とか、年代が一部であるとかという要因もあるとは思うが、同情がそれ以上の本質的な追及にならなかった。
原因はメディアである。民衆にそこを気づかせるべきメディアがジャニーズに刃向えないからだ。TV番組の視聴率を上げてスポンサーひいては自分たちの給与を授けてくれるタレントを抱えている一番がジャニーズだからだ。これは日大において人事権を握っている常務理事を日大内部から突き上げることができないのと同じ構図なのである。ジャニーズのときはメディアが世論形成をしなかった。今回の日大では世論を味方にして内部から改革の声がやっとあがっているわけである。そして、口先では責任は自分が取るように言ってけしかけておいて、いざ問題になると逃げる張本人たち。旧陸軍などでもよく見受けられた日本的伝統の1つなのかもしれない。
我々は、自分たちはきちんと見ていると思っているかもしれないが、大事なところを見落としている。私はメディアを信用していないのと同様、何も見えていなかったくせに今、日大を責めている庶民も信用に値しないと思っている。
これも指摘しているのを見たことはないが、今回の件で少なくとも現在の日大学長の叙勲は完全に消えた。旧帝大などの有名大学の学長は無事に任期を終えれば退任時に必ず勲章が転がってくることになっている。その栄誉のために、学内での派閥争いが起きるほどである。日大はもともとは皇道関係の法的研究から始まった由緒ある大学。今でこそ、偏差値で日東駒専とかポン大などと揶揄もされるが、創立はかなり早く名門である。調べてはいないが、皇室との関係から言えば叙勲対象だろう。それがパーになったはずだ。
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会見全部を見たわけではないが、わかったことはこれでも辞めない常務理事のチタン合金並みの心臓の強さと、司会者から見えた日大運営組織の質の酷さと、メディアの質問のバカさ加減。論理思考や戦略とはほど遠いオツムの持ち主しかいないようだ。日大受験を考えている生徒はほかの大学を受けることを奨める。無理して入ってもこれでは就職や他大学院への進学に影響する。今すぐ体制が崩壊しても関係先との調整に時間がかかるので間に合わない。日大生を含む大学生には就職先としてメディアはやめた方がいいだろう。あのような仕事に人生を捧げるのは馬鹿げている。
こんなそこらの飲み屋にでもいくらでもいそうな愚かな親父が7万人の学生を預かる日本最大の大学のトップであることが信じられない。(直前に何をしていたかは2つめの動画の終わりの方でわかる)
https://www.youtube.com/watch?v=0x9o1GHUG4Y
https://www.youtube.com/watch?v=BRB9y0yENrM
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どう追い込まれようと危害を与えた事実から加害選手を非難する人もいるが単純に過ぎる。能力を買っている選手を敢て外して発奮させるというのはスポーツに限らず会社の中でもよくある話だが、パワハラと区別がつかないものもある。ちょっとしたものまでパワハラだと言っていたら成長もできないが、今回のは明らかに行き過ぎだ。しかも、大学側との対話で相手への謝罪を止められていた関係で、結果的に退部覚悟で名前も出し、大学側無しで単独謝罪会見に至っている異常さを考えれば、加害選手も被害者である。謝罪会見後も幕引きではないことも明言しており、逃げてもいない。人生を台無しになりかねない状況に臨んでいる点で戻って地位の上がるヤクザの鉄砲玉と真逆。同じだと非難する人はもう少し頭に血をめぐらした方がいい。やった行いに問題はあったが、その大元がより重要だ。
彼が反則しなかったら、単独会見に踏み切らなかったら、アメフト部も日大本体もその腐った実態が明るみにならなかったことを考えると、非難より腐った内情を知らしめたことをプラスにとらえるべきで、そうしなければ、あの単独会見を実施した意味がない。今回の件で、自分のところは大丈夫かと冷や汗を流してる他大学もあるだろう。
霞が関と大阪維新と大阪府警は日大を一掃する見事なタックルを見せてほしいものだ。助成金はゼロでお願いしたい。資産はあり、痛くも痒くもないらしいので(なら、助成金にたかるな)。それにしても、たった1人の選手の退場がここまで大事になるとは、あの時点で思った人は、たぶん一人としていなかっただろう。
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内田前監督は常務理事に執着していたが、5月30日付で辞任となった。関東学生アメフト連盟の認定と処分、第三者委員会の設立の影響と、おそらくは警視庁の方のOBから、さすがに今回は世論の高まりから守り切れませんとパチンコ理事長に話が行ったはず。それで切ったのだろう。後ろ盾が無くなればどうしようもない。これでアメフト関係の問題幹部は消えたが、パチンコ理事長の体制が残っている以上、日大の変革や解体は止まったことになる(前常務理事も職員として残存。ほとぼり冷めたところで復活だろう)。パチンコ理事長の暗い部分を本気で炙り出すかどうかだが、たぶん、警視庁OBとここで手打ちした可能性が高いだろう。アメフト関係も他のコーチは残るだろう。挿げ替えで終わり。日大を切り崩す力は今のメディアには無いだろう。受験生が激減すれば話は変わっていくかもしれないが、時間がかかる。渦中の2人は詰んだが、日大自体は追い込めずに終了か。