崩壊した世界屈指の古書店街 | An Ulterior Weblog

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何年かぶりで神保町に行った。


驚愕した。古書街がここまで崩壊しているとは知らなかった。


老舗の巌松堂が消えて別の書店になっているのを見たときは全く固まってしまった。看板は残っていたが、別の書店が買い取って完全に品揃えは別だった。

松村書店はかなり前に建物ごと消えて駐車場になったままだ。ここはこの地域関係者が利用するためのものかも知れない。駐車違反の取締強化の対応のためとか。。。

洋書のタトル商会もだいぶ前に閉店しているが、店の中は空っぽのまま。何も入っていない。

老舗も老舗の玉英堂も品揃えが変わり、量も減った。無くなったのは理工系専門書。

村山書店も建築関係含め理工系がやはり縮小。

明倫館は以前と同じで健在だが、商品も数年前と同じものがそのまま残っている。


古書店街は建築の世界では藤森東大名誉教授が命名した看板建築の宝庫として有名だが、この崩壊とともにかなりその雰囲気が失われてきている。看板建築とはまったく異なる店構えで威風堂々の洋書専門の北沢書店は以前は周囲の昔ながらの古書店に喧嘩でも売ってるのかと思えるほど浮いた存在にさえ見えたが、今となっては周囲につまらないビルが並び、看板建築も消滅しかけている中、古書街を代表してその踏ん張りを示す牙城にさえ見える。もっともこの北沢書店にしてからが売り場縮小を余儀なくされている。


御茶ノ水界隈は学生の街という感じだった。喫茶店も多かった。駅から下っていくと右手に明治大学、左手に日本大学、背中には順天堂大学に東京医科歯科大学、下った先には東京電機大学と大学が多いし、予備校も多くあった。

駅の近くにはクロサワ楽器の店が並んでいて、下った先の左手、小川町にいくとスキーショップが多く、右が神保町の古書店街と大学生活をサポートする日本最強の界隈だった。

小川町の裏手の海和さんのお店とかにも行ったりしたが、基本的にアルペンレース関係の店が少ないので、小川町方面は特別用事がなければ行かない。

しかし、神保町の方は専門書の入手の関係で以前は毎週のように通っていた時期もあったし(都心近くに一時期住んでいた)、数年前でも年に何度かは訪問していた。しかし、このところはとんとご無沙汰だった。


出版社の厳しい状況は作家の口からも出版関係者からも直接何度も聞いているし、コミックやアニメといったものに押されていることも聞いている。とにかく活字関係は大苦戦で、文学が消えてしまうのではないか、だから村上春樹が毎年話題になってしまうのではないかという心配の声まである。戦後の学生が文学や芸術や政治を喫茶店で集まって議論を交わすというのが定番だったが、そういう風景がほぼ消えてしまったと言っていいかもしれない。


いつだったか、早稲田大学の近くの軽食喫茶に入った。数人がテーブルを寄せて固まっていた。1人だけ老齢の方が居て、あとは皆若い。老齢の人が話していることに集中して若者が真剣に耳を傾けていた。どうやら大学のゼミのようだった。店の中が猥雑でよく聴き取れず、何に関する話をしていたのかはわからなかったが、文学もしくは哲学といった雰囲気だった。今でもこんな風景が見受けられて懐かしいような少しほっとしたような気分になったが、神田界隈のこの壊滅ぶりを見ると、こういう風景も消えていくのかと暗澹たる気分になった。


いま、少子化で学生が減っているという言い方がされるが、実は大学は昔に比べ大きく増えて、人数枠だけで言うなら全入時代に突入して学生数は増えている。しかし、大学生全員が大学生に値するわけではない。本来の知的な大学生の減少につながったのは事実だろう。

でも、本当に古書店に打撃を与えているのはそれではない。一番はネット販売。特にアマゾンが全国の古書店を実質的に組み込んだことだ。当初はなかった絶版本の情報をどんどん掲載してそこに古書売買のルートを築き、大きな市場へと拡大した。全国古書店組合も独自のネット販売サイトを作り上げたが、動きが遅かった。

ブックオフは原因にはあまりなっていない。なぜなら、文庫本とかコミックとか大衆向けの本しか扱っていないので各分野に強い専門書店には影響がなかった。様子がおかしくなってきたのはやはりアマゾンの古書店の取込みが加速したあたりからだ。その証拠に全国古書店のサイトに掲載しながらもアマゾンの中古販売にも出している状況だ。たぶん、甘くみていたのだろう。アマゾンが専門店を飲み込むことなどできるわけがないと。

さらに、ネットの威力は古書店の資格を確保しなくても一般庶民がアマゾンやヤフオクを通じて直接売買できるようになった点である。古書店を通す必要がなくなったのだ。一般書籍はもう古書店同士の売買には出てこなくなった。


欧米の先進国にさえ比肩するものがなかった世界屈指の伝統ある古書店街がアマゾンごときのなり上がりに短期間にあっさりシャッター通りのようにされてしまう時代になってしまったのである。



※私は古書をアマゾンでも購入するが、古本屋サイトとオークションを中心に探し、無い時にのみ使う。洋書については英米加のアマゾンより安くて豊富な品揃いのAbeBooksを利用する。ただし、日本のような良品は期待できない(それは海外のアマゾンも同様)。アマゾンはトラブルが以前に多かったこともあり、嫌いだ。本当は実物を検分して購入したいところだが、全国をいちいち確認して回ることなどできない。仕方がない。新刊は丸善のネット販売頼み。