まったく情けない。素人のような誤解をずっとしていた。
遠赤外線は体の奥まで行かない。暖房に使われている遠赤外線は体の表面しか暖めることができないと計算で確認した。
一番低い周波数の遠赤外線でせいぜい0.5mm程度(人間の体の8割は水なので水として計算。残り2割の有機物で少しは上がるはずだがデータがない)がいいところのようだ。
マイクロ波、特に電子レンジや携帯電話などの3GHz程度だと、加熱される範囲は体表面から2cmから3cm程度になる(私が携帯電話を極力利用しないのは内耳や脳が熱せられるのを避けるため)。手なら中まで完全に暖まる。肉をレンジで焼いたらそれぐらいになっているのは経験があるはずだ。病院で患部を暖めるのもマイクロ波だが、それはこの深い浸透の性質を利用している。
マイクロ波と遠赤外の境界部分の両者の周波数の差は約10倍(この境界域では性質が明確に分離できず電磁波と光の性質が混在)。すると周波数の逆数で浸透するので、数mmにはなり、それで十分暖めることができる。
ところが、よく生活に利用されているマイクロ波はマイクロ波域でも真ん中ぐらいで、遠赤外の百分の一以下の周波数になる。そうなるとさらに小さくなって0.数mmとなる。これでは体の芯に届くことなどありえない。血管やその中の血流も無理だ。届かない。
実はもっと本質的な問題がある。温度との関係。
電気ヒーターにしろ壁にしろ、温度あるものからは全て遠赤外線が出ている。というより、温度とは遠赤外線以上の光のことなのである。
温度によって、どの波長の輻射(光)が出るかというのはプランクの式を使う。これから外れることはない。それをグラフ化したのが以下の文献の図-1である。
ある温度でどの範囲の輻射が出るかというのがこの図だ。遠赤外線は絶対零度から出始める。大事なことは低温だからと言って長波長(低周波)域には伸びていかず、高温になるとより広い範囲の輻射を出すということ。つまり、低周波域の輻射量を増やしたいならば高温にしなければならないという、ちょっと不思議に聞こえることを示している。メーカーが出してるような図-7のようなものはあり得ない。誤魔化されないようにしてほしい。お湯でもヒーターでも関係ない。物ではなく「温度だけ」で決まる。
浸透深さの式(よく見かけるのと違い、電磁波用の電力半減深度を使う。式は複数あるが、どれもほぼ同じ値になる。その2、3倍が加熱される実際の深さになる)や材料の特性については以下が参考になる。材料特性はマイクロ波での特性なので、遠赤外にはそのまま当てはまらないが、相対関係はほぼ同じだろう(水が一番浸透しないなど)。
http://www.microdenshi.co.jp/microwave/
以上で計算すると、どんなに低温にして遠赤外線の周波数を下げても温まる範囲は0.5mm程度が限界だとわかった。まして高温になれば、主に受ける輻射の浸透深さは数十ミクロン以下、つまり髪の毛の太さ以より小さい。
マイクロ波と遠赤外の周波数レベルと浸透深さは大まかには知っていたが、詳細に調べるとレベル差が大きいことがわかった。(まったく情けない)
ただし、遠赤外線が多くの物質に吸収されるところは赤外線などと異なるのはたしかで、部屋や窓を暖めたいのであれば、ガラスを透過する赤外線は避けて、遠赤外を使う方が断然いい。その目安は上の文献にも記載があるとおり800℃以下が遠赤外で、それ以上が赤外とみていい。ずいぶん赤くて明るいと赤外の範囲だと思っていい。ただし、赤外を出しているということは遠赤外も少し出ていることをお忘れなく。
まとめよう。
・遠赤外線は体表面の数十ミクロン以下のごく表層しか暖められない。常温の壁でも赤熱した物体どちらからも人が受ける輻射の浸透深さはとても小さい。
・セラミックなどヒーター加熱材の差は放射構造などの違いと併せてもせいぜい10-20%程度で、加熱材に拘る意味はあまりない(エコ派は無視しないだろうが、判定する装置など個人家庭で準備できないし、感覚的にはわかりにくい)。メーカーの謳い文句は眉唾物と言ってよい。
・発光色によって暖房機の遠赤外線の割合を判定してよいが、それを気にしても体への浸透の違いはほとんど出てこないので赤外だ遠赤外だと気にしても仕方ない。感触の個人差だけ。
・部屋や窓の暖房として遠赤外は意味がある。赤外では窓から消失する。人を暖めるのはどちらでもよい。
・ヒーターを選ぶなら、あまり赤熱しないタイプのもので出力で適切なものを選べば少しは遠赤外線の割合が高いが、部屋を暖めることを優先しないのであれば気にしなくてよい。それより、直接、輻射が放射される管が剥き出しの方が無駄なく温まる。反射板とかその他の作りをできれば実演で判断するとよい。
さて、こうなるとマイクロ波暖房器があってもいいのではないか?と思う人がいると思う。電子レンジはまさしくそうだ。では、なぜ暖房用はないか?
マイクロ波は光というよりは電波の性質が強く、家庭内の金属物や家電で火花を飛ばす。電子レンジの中に携帯やCDプレイヤーを入れる勇気はあるか?携帯の通話にも雑音が混じる。近所にも迷惑をかける。
遠赤外線は太陽の光と同じでそのような悪さはしない。マイクロ波は医療とか産業で局部的にあるいは閉鎖空間の中で使われる。暖房のように高出力では生活ができなくなるので存在しないのである。
※追記
コロナのコアヒートとダイキンのセラムヒートのどっちがいいかとお悩みの貴方に。どちらも3~20μmの波長ということで温度的に300~500℃ぐらいのものと推定される。この温度では全く光らない。波長域同じでどっちが能力として高いというのはない。上で説明したとおりで熱源が何かは関係ない。出力も最大1100Wと同じ。ということは違いなし。どっちでもいい。センサー機能とかタイマーとかの使いやすさがどっちかと耐久性などで選択すればよい。