さらに続く壁厚みの話。
一昨日はi-cubeとパッシブハウスについて書いた。断熱材を厚くすれば快適にはなっていくのは当然だが、実際にはC値と呼ばれる壁の単位面積あたりの隙間がどれぐらいかというのとバランスして初めて家の性能は発揮される。折角、厚い断熱を施しても隙間が大きければ室温は外気温に左右されていく。
施主は断熱ばかりに目が行くが、このC値が結構重要だ。大体、1m角に1cm四方の穴が1個を超えると断熱を通常を越えて施しても性能は出にくい。パッシブハウスは1cm×2mm以下のわずかな隙間(ほとんど鋸キズ)しか許さない。これだけの隙間制限になると24時間換気口があることが全てを台無しにするので、換気は熱交換型を使用し、熱の出入りを防ぐ。その装置のための電力は数十ワットがかかるが、電球1個程度なのでまあ許せる範囲だろう。
熱交換型換気装置(多くが北欧製)を使うと家の中のあちこちにダクトが這いまわる。私はこれを嫌った。中にカビや虫が湧いても対処できないからだ(特に浴室の換気が疑問。日本の入浴習慣はドイツとは全然違う)。パッシブハウスはドイツで生まれ、北欧の標準になっているが、高温多湿でもない国だからできる話で日本でどうかは当時適用例がなかったし、意外に難しいのではないかと思った。北海道や北東北まではOKかもしれないが、日本全体には変更が必要に思う。日本での歴史が浅すぎる。
しかし、もっと大変なのが地震。
C値というのはしっかりした構造体に板とかが狂いなく施工されて初めて成立する。最終的には家全体をシートで覆って隙間を無くす。もし、直下型の大地震で構造体が変形し、シートの一部が破れたり剥がれたら、構造体は大丈夫でも気密性は損なわれたままとなる。もうどこが傷んで漏れているのかはわからない。外壁を全部剥がすことになる。だから、家は単に地震に耐えるだけでなく、少なくとも外壁などヒビ1つ入らないぐらいにしておかないといけない。それでも、変形はするから、どこか破れる可能性は十分ある。
家そのものは壁が厚いので倒壊とか住めなくなるとかいうことは起きない。
では、気密性を損なったとして断熱だけでどこまでいけるか?これの検討データは知る限りではないようだ(最初に1cm四方の穴が1個と指標を述べたが、計算と設計物で合致しているというだけで、シート加工後の破損試験などはない模様)。このようなとき、パッシブハウスはどこまで有効かという問題を実は誰も真剣には捉えていない。単純に断熱を厚くしても意味がないのはたしかだ。
何十年に1度という地震のために快適な家を諦めるというのは馬鹿げているという意見は当然あるだろう。ただ、それが建てて1年で起きたらどうするのか。事実3.11は地震の専門家も想定していなかったし、いま家を建てている人はもうまるで何もなかったかのように気にも留めていない人が少なくない。
パッシブハウスのようにゼロエネルギーを目指す家は増えていくだろう。しかし、日本に導入するにはまだまだハードルがある。それらの見通しが立てば住みたい対象だし、人にも勧められる。
そんな中、パッシブハウスを超断熱とするなら、200mmぐらいの高断熱が妥当な範囲に思えてくる。そういう意味では2×6やi-cubeはいい線いっているのかもしれない(ただし、前回の謎は残ったままだが)。あとはその条件下での高性能化を狙っていくのが一つの鍵のように思う(窓と断熱材をもっと熱を伝えにくいものに開発パワーを注ぐといったように)。
こうして振り返ると、現代の日本人はアイヌから何も学んでいないように思う。欧米の合理主義的なアプローチに終始追従していて、本当によい住環境とか住まい方というのはどうあるべきかを真剣に考える時期に来たのではないかと思う。技術力があるのだから、この風土にあった未来の家を。
ちなみにチセの壁(というか笹葺き)は200mmである。この間で空気の熱交換がなされる。
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以前にも「パッシブハウス」と題してエントリーを挙げたが、中身がないので敢えてここでは引用していない。当時はまだ本格的な情報が不十分なときで、その後、いくつか実際に施工されているが、人が住んでいる例がまだまだ少ない。ここで問題にしているのはエネルギー問題を解決する1つのアプローチとしてパッシブハウスがある(健康問題にも直結する)が、ドイツ生まれのこの概念や仕様が北海道から沖縄まで、梅雨と台風と豪雪に極寒と多様な日本の風土にそのまま適用できるものではないのではないか、日本仕様というものを本気で考える時期に来たと思ったのが動機である。