(前編からの続き)
どうせまたあの門番の目にはじかれる…
そんな諦めとは裏腹に、少年は満面の笑みで私に手を差し伸べた。
着地と同時に私も門番と同じ白い服の子供になる。
長い神殿の廊下を、手をつないで走り出す!
つないだ手からぶわっと記憶が蘇る。
そうだ!私たちは同僚の神官であり心を溶かし合う愛しい友人だ!
キャハハハハ!!!
私も門番も嬉しくてはしゃぐ子供そのものだ。
走った先に神殿はなかった。
廊下は突然切れて断崖絶壁になっていた。
私たちは躊躇なくジャンプする。
レムリア…
そこは、手を広げれば鳥になり
スクリューすればイルカになれる
子供のイメージそのままの世界だった。
空中をトンビのように旋回しながら、門番が指差す眼下を見た。
ぎっしりと、現代地球にはない建物が立ち並び、温かい明かりが灯っていた。
私にはこみ上げるものがあった。
激しい地殻変動で地面が断絶し神殿は崖の底に落ちたのだ。
終わりだと思ったこの世界は続いていた。
この世界の人々は、落ちた先で生き延び生活を繰り広げていた。
良かった。良かった。
なんて愛しい人々よ。
なんて頼もしい生命よ。
なんて素晴らしいこの世界よ。
…
その後連絡を取った知人の口からポロリと出た言葉ですべてが氷解していった。
「レムリアはもう復興したからね。
力ある方々が過去のレムリアに入って調整してくれてたんだけど、やっとそれが終わった。
見届けたイシスも安心してシリウスに帰ったよ。」
門番の後ろに、数人の大人が見えるときも確かにあった。
あの大人たちがきっと、過去のレムリアに入って調整してくれた「力ある方々」なんだろう。
神官の少年は復興が終わるまでレムリアに立ち入らせないための門番だった。
復興前の、ズタボロのレムリアを見て私が深く傷つかないように…
あの時、ライブが終わって私は長い旅から帰ったように呆然としていた。
出口のドアに目をやると、同じタイミングで振り返った人がいた。
女の人…に見えたけど綺麗な男の人だ。
振り返ったときに照明が大きな目に反射してキラリと光った。
ハッとする。
門番と同じ目の輝きだった。
後編へつづく