浅利 | ミナミのブログ

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のんびり、、まったり

春になると、浅利が食べたくなる

 

子どもの頃、三渓園の、今上海公園のある辺りは遠浅の海で

この頃になると、次姉と妹と三人でバスに乗って浅利堀に行った

 

当時はまだ車掌さんが乗っていて、大きながま口から切符を出して

切符切りで切ってくれた

 

大人一人に子ども一人がタダなので、次姉と子こども料金の私の分とを支払って

バスに乗る

バスの席は左右に大きなベンチのように設えてあり

ビロードの青い生地で覆われていたそこに詰められるだけ詰めて座っていく

山下橋のバス停から三渓園入口まで乗り、後は歩いていく

 

この先には母と妹と三人で暮らしていた頃通っていた幼稚園が有った

そして幼稚園の近くに母の幼馴染が営む塩豆を売るお店があった

 

黒い、蜜マメに入っている豌豆を蒸して塩味にしたもの

 

母は迎えに来た幼稚園の帰りにこの店のおばさんとしばらく話して

私はおばさんからその豆を貰って食べて、母たちの話の終わりを待っている

 

次姉と三渓園に行くときはこのお店の前を通るのだけど、お店の中らからは

おばさんの知らない姉と一緒の私に声をかけてくることは無く

 

私もまた姉たちと子どもだけの三人だけの時は

お店に入ってはいけないような気がしていたが

後に母と二人で行ったときに

この子はお母さんとでないと無愛想だからと言われて

何だぁと思った

 

三渓園に着くと、多くの人がズボンやスカートをたくし上げて

中にはモンペを履いている人もいて

浅利を掘っている

入り口で貰った網以上獲ると追加料金がかかるのでいっぱいになったら終わり

 

大人たちはその料金を払いたくないのか、崖を器用に上って

所謂木戸破りをしていったりする

 

たまに門番の、麦わら帽子を被ったおじさんに見つかって叱られたりして

 

そうやって獲って来た浅利は母が酒で蒸して浅利ご飯を作ったり

佃煮にしたりしていた

 

私はその浅利の剥く母の手許を見るのが好きで、いつも母の傍にいた

 

母は洋裁も編み物も上手で、それもまた私は見ているのが好きで

母が縫物をするときには傍にいて針に糸を通してあげて、褒められると嬉しくて

 

剥いた浅利の殻は当時は砂利道の水はけのためにと、道路に撒かれていた

 

今ではあり得ない話だと思うが、当時の人家の前の道は舗装などされておらず

ところどころに水たまりが出来ていて、七輪の練炭の燃えカスや小石などを集めて

補修されていた

 

夫と一緒になって、夫の実家に初めて行ったときに

相馬の、松川浦というところまで姑の作ったおにぎりやキュウリや

玉蜀黍などを持って潮干狩りに行った

 

遠浅の砂地に休憩小屋が建てられていて、そこに荷物を置いて浅利を掘る

三渓園とは違い、内湾の浅利はとても大きくて、直ぐにバケツがいっぱいになった

あまりにも楽しそうに掘っていたと見えて、舅が楽しいかと聞いてきた

楽しいですと答えると、可笑しそうに笑っていた

 

その地から海へ向かう道路には魚を焼いて売る浜焼きの店が立ち並んでいて

海老や烏賊やいろんな魚の美味しそうな匂いがして

その先には魚市場が有った

そのもっと先は牛鼻毛だと教えられたが

夫に聞いてもそれがどこなのかは分からなかった

 

その後、震災の後に一度だけ通ったことが有ったが、全てが新しい街になっていた

 

浅利は家に持ち帰り、バケツに海水と同じくらいの辛さの塩水を入れて

金気の、包丁や火箸を入れておくと、砂が抜けると教えられた

 

浅い春に台所の、流しの中に浅利を入れたボウルに新聞をかけておくと

夜中の、家の中の全ての音が消えた頃に浅利の潮を吐く音が聞こえてくる

 

今はむき身になどせず、酒で蒸して、大蒜や唐辛子などを加えて

パスタにする

菜の花を使ったりもする

 

夫がモンゴルから緊急帰国して、時間を持て余している頃

思いついて潮干狩りに誘ったことが有った

 

金沢八景の野島海岸

連れて行くと夫は楽しそうに浅利を掘り、小さなバケツがいっぱいになると

満足そうに、そして大事に家に持ち帰り、お味噌汁にした

 

海で、それも自分で獲った浅利は何故か格別においしい気がする

たぶん間違いなく美味しいと思う

 

昨日スーパーに行くと値段も然りながら、親指の爪ほどの小さな浅利なので

諦めて、娘に浅利堀に行くかと聞いたら、割と乗り気で返事をしていた

 

物の本によると、春分の後の満月の大潮には浅利の動きが活発化するので

たくさん獲れるそうだ

 

春分は20日、満月の大潮は、25日 

久しぶりに姑直伝のおにぎりときゅうりの漬けたのを持って出かけてみるかな

 

そういえば、蟹は満月には産卵するために海を渡るので

獲ってもあまり美味しくないそうだ