諸般の事情で普通車の運転免許を取得することが許されなかった私は
一日で取得出来る原付の免許を取った
割と拘る性格の私は猛勉強をして、筆記は満点
周りの若者たちにさり気なく自慢して三年後
免許の更新に坂を下り、坂を上った先の警察署に行くというと
友人がお願いがあると言ってきた
当時、市の広報に植えてはいけない花というものがあり
知り合いから貰った花がどうもそうらしいと
誰に?と聞くと、前の人がとても奇麗な紫の花を咲かせていて
息子さんの机に種があるからよかったらあげるわと言われたとか
成程、と、警察署に行き、順番が来るまで時間が有ったので
窓口に、相談があるのですがと言いにいくと
over stay?と聞かれ
日本人ですけど、と答えたら、ああ、という返事
掻い摘んで友人の話を説明すると、二階に行ってと言われ
階段を上がると署員がいて、何?と聞くから、顛末を話し、相談が、というと
ああ、と言って通されたのは少年課
私の前に真剣な顔で座った署員の方が、どうしたの?と優しく問いてくれたから
友人の話を説明すると、ああ、そう、ここは少年課だから、と
私にも見えましたけどね、少年課という文字が
それで、漸く花の話になり、申告せずに花の種が出来ていたら
友人はいろいろと厄介なことになっていただろうということは想像ついた
少しキリっとした顔になった刑事さんが、あとはこちらでと
その後、友人の家の庭の花も、前の人の家の花も、全て警察が持ち帰ったそうだけど
友人のやつ曰く、凄くハンサムな人が来たのよ、と、もう一度花を植え兼ねない感じで
少し怒りを覚えた私は、そんなことしていると
警察に捕まって風呂敷包み一つで刑務所に入れられるから
そしたら面会になんか行かないからねと言って帰って来た
それから半月ほどした冬のある日
日の降りた頃から我が家の階段の下の、薄暗いところに
二人の怪しい男が立っていて、それも何日も
翌日の昼間降りていくとその場所には煙草の吸い殻が数えきれないくらい落ちていて
気持ちが悪いから明日警察に連絡するかな、と思っていると
外から
低い声で、〇〇かという言葉と、おいという言葉と
数人が走り出す音と
川だ、という声が
サスペンス映画の実写版みたいな状況で
近所の子どもが警察に捕まったという話を聞いたのは翌日の夕方
友人が花の種を貰った家の息子さんと友達だったようだ
麻薬の常習者だったとか
どちらも会えば普通に挨拶をする子で
そしてどちらの家もごく普通の家庭なのに、子育ては難しいものだと思った
友人は暫くその刑事さんのことを話していたが
ある日他でイケメンを見つけたらしくそれ以降は聞かなくなった
で、今気がついたが、私はいったい何課に相談に行ったのだろうか