昨日の夕方チャイムが鳴ってご近所の人が林檎を届けてくれた
居間と台所を行き来する時、暖房の無い廊下を通るので
ヒートショックを起こしてはならないとしまむらで買った樺色のもこもこの上下を着ていた
迷ったけど、玄関を開けるとお隣の奥さんがちょっと驚いた顔で見て
気を取り直したように林檎を頂いたからと
それから間を置かず帰宅した娘が、とうとう厚木に熊が出たって、と帰って来た
もしかしてあの奥さん、私のことを一瞬熊だと思ったのかな
なんて考えていたら、今は疎遠になっている友人を思い出した
当時、私の仕事を終えて飲みに誘い、出かけようとすると
そこのご主人が背後から、トド撃ちに狙われないようになと注意してくる
このご主人、あくまでも友人からの情報だが
マザコンで、連休には必ず実家に帰るのだとか
実家に帰ると林檎や漬物を貰ってきて
それを妻はおろか子どもにさえ食べさせることなく
大切に大切に召し上がると
苛立つ友人はある時、逆襲を思いついたそう
持ち帰った林檎や漬物をそのまま電子レンジにかけて
暑さで傷んだのではということを
正直な話、私の周りには実家から持ち帰った林檎を戸棚に入れて
一人だけで食べる人というのを見たことも聞いたことも無いので
半信半疑だったが、ある時、駄菓子を、よかったらどうぞ、と
鍵の掛かった金庫から出してきて、びっくりした
幾つかの駄菓子の小袋を私の前に置くと、再び金庫にしまったのだ
林檎には申し訳ないがこれなら仕方ないかと変に納得した
ただ、友人の逆襲はもっと恐ろしく
ある時このご主人が勤め先のおばさんというワードで
そのおばさん達と一緒にトレッキングに出かけることが多くなったと
友人が話してきた
彼女の中のイメージでは、おばさんというのは
あまり身なりも気にしない、雑駁な自分よりかなり年上のイメージだったらしい
それで私が、おばさんて、私達の年代の人も言われることが有るよね
というと、何かが閃いたようで、ご主人の勤め先の近くで張っていたら
案の定当時の彼女より若い女性と腕を組んで二人で駅に向かっていったと
彼女の逆襲というのは、その駅でご主人に声をかけて
会社の同僚と紹介された女性とご主人と、三人で某ホテルに行き、フルコースを食べて来た
それだけの話だが、ご主人は翌日何を思ったか友人の前で正座をして、山登りセットを全て捨てたと話したそうで
彼女はフルコースをしっかり食べ出来たが、二人の男女はひたすら無言でお水を飲んでいたという
ご主人の勤め先はそのようなことが有れば一発outで有名な業界
公私ともにさぞ生きた心地がしなかったことだろうと思った
そして、いつもは粗忽で、感情を顔に出す彼女をこっそりと見直した
この話を書きながら、コロナ禍の、密です、ソーシャルディスタンス、以降
全く連絡を取っていないことを思い出した
何故なら、双方に共通の友人がいる訳でもないから手紙や電話で語る間柄でもなく
挙句コロナ禍で会うことも無くなり
噂をすれば影という諺があるから、あと何回か彼女について書いてみようと思う