失せモノをした時には裁ち鋏を逆さまに吊るすと見つかるそうだ。
理由は、分からない。
祖母や母がそのまた祖母や母に聞いた話だそうだから
古くから言われていたのだと思う。
そんなふうに人の口から人に伝わってくることは伝承というそうだ。
例えば
靴を履いたまま土間に降りてはいけない。
新しい靴を履くのは午前中にしなさい。
どうしても履かなければならない時には靴の裏に炭を塗りなさい。
夜に爪を切ると親の死に目に遭えない。
この辺りは今でも教えられているように思う。
靴を履いたまま土間、には、嘗て葬儀の時
葬儀を司る人が棺を草鞋を履いたまま土間に降ろしたということで
縁起の悪いこととされるとか
夜爪を切ると、今のように電気の無い時代には暗くて手元が危ういからとか
それなりに理由があるように思うけど
私が子どもの頃に有った伝承には
怪我をしたら着物の袂の屑を付けると良いとか
イボが出来たら初雷が鳴った時に箒で疣を掃き出すと治る、とか
長居の客には箒を逆さまに立てて手拭いをかけておくと良いとか
霊柩車を観たら親指を隠さないと親が連れていかれる
などと、噓みたいな話が多くあった。
今の時代はネット上のエビデンスが無いと信じないという人が多くいるそうだけど
根拠や証拠や裏付けの全くない
誰が言い出したかもわからないネット上のエビデンスも
結果的には誰かの創り出した伝承に過ぎない気がする。
そのエビデンスなど欠片もない話だが
私は、周りの人に言わせると
神がかり的にモノを探すのが上手なのだそうだ。
例えば母が擂粉木(すりこぎ)を探していると
私が来て、ここにあるよと教えてくれたとか
ご近所のおばさんがバケツを探していると、これですか、と見つけてくれたり
娘が明日持っていくノートが見つからないというと
これ?と、机の前の本立てから探し出してくれるとか
これは多分、エビデンス的に言えば
私の勘が他人(ひと)より少しだけ長けているんだと思う。
そんなふうに言われる私自身は探し物が大の苦手だ
だいたいにして探し物をしているうちに他のモノが目に入り
そちらに気を取られているうちに日が暮れて、結局一日を無駄にしている
母に言わせると、そういう人をアホウドリというそうだ。
何故なら、アホウドリの鳴き声が
アシタヤロウ、アシタヤロウ、だからなのだとか
実際に聞いたことは無いが
YouTubeで確認すると何故かそう聞こえてくるから不思議
そんな話を娘にしたら
探し物が何であったかを忘れないだけマシなのではと言われた。