ロケの風景 | ミナミのブログ

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のんびり、、まったり

私は子どもの頃からいろいろなロケ風景を観ていた。

 

思えば元町の山の手側はその昔痴人の愛を描いた谷崎純一郎の撮影所が

有ったところだから

私が生まれるずっと前からロケ風景は有ったのだと思う

 

私が初めてロケというものを知ったのは山下橋の袂に忽然と現れたお店から。

 

長姉と付き合っている間柄だった義兄が

橋のたもとに喫茶店が出来ていた。と少し興奮気味にやってきた。

明日みんなで行ってみよう。

 

ところが翌日行くと、お店の影も形もない。

義兄は狐に抓まれたような顔をして、しきりに、有ったんだけど、と

無実を主張する如く繰り返して。

その謎は通りがかったおじさんから簡単に解けた。

 

あれ、ロケだよ。昨日の夜、浅丘ルリ子と赤城圭一郎が、と。

 

事故を知り赤木圭一郎はたぶん最後の撮影になったのではと今も思う。

 

その後、釣り船屋さんの隣にある『みなと』という店の店主が

桂小金治という話を聞いて

テレビに出ている人がわざわざこんなところでお店をしているんだと

信じていたこともある。

 

石原裕次郎さんが出入りする

船室みたいな店の店主役だと知ったのは

テレビでその映画が放映されてからだから

私は相当長くその話を信じていたことになる。

 

ある時は我が家の前を男が二人、そのあとを集団の男が追いかけて

それを見た母が急いで家に入り、鍵を閉めて怯えていたが

それは二人のデカの物語で。

 

そのせいなのか、近隣に俳優になる人も多くいた。

前の家のおばさんの家にはそこのお兄さんが連れてくる学生がいて

その人はおばさんの家の窓に腰掛けて、海を見ながらギターを弾いて

何かを歌っていた。

あまり口をきくこともなくいつの間にか来なくなったけど

暫くしてそのお兄さんがレコードを出したと

ドーナツ盤のレコードを一枚おばさんが持ってきて

そのお兄さんが俳優になったことを知った。

 

おばさんはその青年のために何枚ものレコードを買ったらしく

近所の人に配って歩いていた。

けど、その俳優さんからおばさんについて語られることは一度もない。

 

最近のロケの風景を見ていると、演じている人のことが

まるで薇仕掛けの人形を見ているような無機質な感じがする。

 

山手から元町の喜久屋の前までロケしている最中の

高倉健さんは通りがかった人が横切るのを躊躇していると

撮影している人を止めて目礼をしていた。

 

高倉健さんが撮影した地では地元の人の協力が厚いというのは

そういうところに要因があるんだろうなと思った。

 

たぶん評価の高い映画やドラマは

演じる人のそういう気持ちが反映しているんだろうと思う。

 

そういえばデパートで会った田宮二郎さんも

ご自宅の隣にある友人の住むマンション前でお会いした

勝新太郎さんも、映画で観た人そのものだった。

私生活まで映画人という人はもういないのかもしれない。