団塊の世代の人たちが就職し、家庭を持ては、当然お金が動くわけで
それをいち早く察知したのは土地ブローカーと地上げ屋の人たち。
昭和四十年代後半から五十年代には警察や新聞記者や病院までその地上げに加担していました。
私の知人のご主人も地上げに目をつけられて。
ある日庭に入り込んで用を足す人の背中をどついたら
隣の人にご主人が暴れていると警察を呼ばれ
機動隊が来て収監され、その様子を新聞に載せられて
背中をどつかれた人が病院に行き、診断書を取って来て示談金を要求してきたので
お金を貸して欲しいと言われて、私はすぐに示談金を持ってその家に行きました。
その示談金を支払うとご主人はすぐに釈放されたのだとか。
どつかれた人がかかった病院の名前を聞くと、
それは、以前会社の従業員が休みの日に他の会社の人に頼まれて社長に断りなく現場に入り
脚立から落ちて、救急車で搬送された病院でした。
骨折をしたと言い、ギブスをして戻り
仕事中の事故ということで保険が効かず現金で支払いをしていたのですが
ある時、見川鯛山の本日も休診という小説を読んでいて
もしかして、と思い、近くのかかりつけ医にレントゲンを撮ってもらうと
骨折の形跡は一切なく、長い間ギブスをしていたために筋力が弱っているとのこと。
本人にその話をすると、最初は病院の先生がちゃんとレントゲンを撮ってくれてたから
信じられないと言ってましたが、医師から腕の太さと指の動きを確認されて
もしこのままずっとギブスをしていたら、中国の人の纏足のようになると言われて
何となく納得したようでした。
そして数日後には釣りに出かけていたので、私もホッとしました。
今の時代であれば直ぐにでも問題になったのでしょうけど
その病院がその数年後に廃業したのは単なる医療ミスによるものでした。
ただ、当時の新聞には
その病院がタクシー会社などと結託して多くの保険金を得ていた事実が報じられて
その際に関わった警察署員の名前も明らかにされていましたが
それが法的な罪になったかどうかは分かりません。
当時はそのような病院が多かったようで、我が家の近くの病院も同様な理由で廃業になっていました。
知り合いの不動産屋さんから、地上げはそれを依頼した人がいるはずと言われて
知人から、お隣の人から大変だろうから家を買ってあげると言われたと話していたのを思い出し
直ぐに家を売って他に引っ越すように伝えると
知人の家は不動産業者を通し、建設業者に売られて、高層マンションが建ち
お隣の日当たりが悪くなったとのことだったので、もし地上げを頼んでいたとしたら
きっと臍を噛む思いをしたことだろうと思います。
地上げ自体は特に違法ではなく、立ち退きの交渉には不可欠なものだそうですが
バブル期が始まる頃はこの事件さえ珍しくないほどに当時地上げ屋と呼ばれる人のやり口は乱暴でした。
後にその形を再現したのがS社で働いていた不動産会社の息子さんです。