よくある間違い「政宗」と「正宗」。
仙台藩祖は伊達「政」宗。
名刀は「正」宗。
ですね。
今回は政宗公と刀の正宗にまつわるお話。
江戸城にて「政宗殿の脇差はもちろん名工正宗の作でありましょうな」と言われた政宗公。
当時は名刀正宗を持つことが一種のステータスでした。
また,話を振ってきた相手が普段からあまり仲の良くなかった方だったせいもあってか,つい「もちろん」と答えてしまった政宗公。
持っていないのにそう言ってしまったものですから,急いで正宗の脇指を探させたものの,見つかったのは脇指よりも長い正宗。
困った政宗公は,細川幽斎に相談します。
すると幽斎さんは伊勢物語の歌を引き合いにして答えます。
「比べきし 振り分け髪も肩過ぎぬ 君ならずして誰かあぐべき」
振り分け髪(下ろした髪)を結い上げる(あぐ=あげる)のは大人の女性になる,つまり結婚を意味します。
「肩にかかるまで長く伸びた(=成長した)私の髪をあげる(=私が結婚する相手)はあたな以外にいません」という歌の「あげる」を「(刀を)すりあげる」にかけて,貴重な名刀正宗をすりあげて短くすることができるのは政宗公以外にはおりませんと答えたわけです。
そして政宗公はお抱え刀工の国包に命じてすりあげさせた正宗に「振分髪正宗」と名付けたとか。
きゃー!なんてもったいない(笑)
この逸話は,伊達政宗公バージョンの他に織田信長バージョンもあり,後世に残る逸話からうかがい知れるキャラクターとしてはどちらもありえそうですね(苦笑)
後々明治になって鑑定したところ実は正宗ではなかったという説もありますが,当時の刀と鑑定した刀が同一かどうかも確実ではなく,大正時代に行方不明になっているので,そのへんの解釈は人それぞれといったところでしょうか。