<プロキオンの香り> | 3秒~3分で読む超短編小説とお気楽メモ

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<題名>とタイトルを書いているのは、短編小説です。他のものは、日記訓練です。去年はよくサボった。今年はサボらないならすごいが、続くとも限らない…?

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朝の衛星トラッキングは順調だった。
データは解析してセンターに伝送したから、明朝の受信まで待機していればいい。

今日は天気がよく、主星のプロキオン・アルファの光が暖かい。
伴星ベータは、主星の背後に回りこんでいる時間なので、地球の太陽のように見える。
陽の光を浴びながら、クワを振ると、土の香りがした。

地球ではやったこともない農作業だった、
待ち時間には体を動かしたほうがいいという前任者のアドバイスで、仕方なくはじめたのだ。
常駐者が自分一人ということも影響していた。
五年もたつと何でも慣れるものだ。
孤独にも慣れた。

この星系に人類が居住可能なのかが研究課題だった。
彼自身がモルモットとなって、人類が生きていけることを証明しなければならなかった。
そんな中で仕方なくはじめた農作業だが、今では好きなんじゃないかと思うようになっていた。
こんな調子で自給自足ができれば、死ぬまでやっていけるさと、彼はつぶやいた。

農作業をやっていると、いろいろな香りに敏感になってくる。
彼は掘り起こしたニンジンの香りをかいだ。
地球とは違う微生物のおかげで、早く生長し、バラのような香りがした。
ほかの野菜類もバラのような香りがした。
この星はその香りに包まれている。

ドドド…
突然、低いエンジン音が響き渡った。

青い空を見上げると、地球から、交代要員を乗せた宇宙船が降りてくる。
一人ぼっちの駐在期間は終わったのだ。
彼は、バラの香りのするニンジンをほおりなげ、丁寧に育てたキャベツを蹴飛ばしながら、走った。
これで、地球に帰れる…
彼は抑えていた帰郷の思いに圧倒され、大声をあげながら、夢中で走りつづけた。

(おわり)


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