知に偏りすぎると、情が薄く薄情な性格になったり、意志が弱く優柔不断でああでもないこうでもないという慎重行動になって、行動力が落ちる。そういうことがあるという。
では、情が深ければいいのかといったら、情ばかり深めて、知が足りなければ、誰かの苦しみに同情するのはいいけれども、どのようにすれば同じ過ちをしないで済むかのアドバイスも出来ない、そういう顛末になりがち。
意志が強ければ、思い立ったらすぐ行動して、行動力があるね、なんて褒められることもあるかもしれないが、よく考えずに行動しているという点において、知が足りない、あるいは周りからの注意やアドバイスを聴かずに、自分はこうしたいからこうすると言って、すぐに意志の実現をしようとする。そういう人間になりかねない。
知・情・意と三つの特性を並べて、これが大切だと言われている以上は、これら３つのバランスを正しく取ることが肝要で、どれか一つに偏り過ぎたら、どれが突出したとしても、他の部分を欠いている、あるいはバランスが崩れているがゆえの弊害というのが、以上に述べたように起きるものなのだ。
知的なことに強い興味関心を持つ人間は、知的活動に邁進することを好むものだが、ただ知にばかり走って、知識を増やすことが第一なのだ、と思い過ぎると、情の部分を深めることの大切さや、意志を強めるための鍛錬方法などには無頓着に、ただひたすらに、思考世界に埋没して、知のみが大切なのだといって、人間としてのバランスを欠いて、結局それが自分自身を苦しめることになるものである。
自然本来の動物には、神が与えたもうた本能的なバランスがあって、思考に偏った動物とか、感情ばかりが豊富な動物とか、意志行動のみ強烈な動物、などという存在はいない。
その動物生来の魂活動の基本バランスからそんなに外れずに、それぞれの動物はそれなりの幸福な境涯を生きている。
しかるに人間という存在は、高度な魂を与えられているがゆえに、思考力を高めることも出来れば、豊かな情操を育むことも出来るし、自分の意志力を強めることも出来る。
魂の修行によって、それぞれの能力を高める、磨き上げることで発達する、という高い潜在能力を与えられているのだ。
それゆえ、それらさまざまな能力のバランスを取ることも、その人自身の判断に任されている。
知に偏り過ぎて人間としてのバランスを崩していないだろうか。自分は情が深いタイプかもしれないが知的な勉強が足りないのではないか。意志が大切といっても、自分はよく考えないで突っ走って失敗することが多く、他の人のアドバイスを聴く前に思い立ったらすぐ自分の意志のみで行動してしまっているのではないか。などなど。
こうしたバランスを欠いた生き方に陥らないように、他のさまざまなタイプの人との付き合い、交流というものが、やはり大切であることがわかろうというものだ。
知的なタイプは、自分の薄情さ、情の薄さを、そばにいる情の深い人を見て反省し、ああ自分は情の部分において、この人に学ばないといけないな、という学びが得られますしね。
行動力のある人を見ては、ああ自分は意志薄弱で優柔不断なところがある、知的な判断ばかりに頼るからあーでもないこーでもないといって決断が鈍いという欠点が出てしまっている。もっと強い意志を持って、覚悟を決めて決断したら、潔く行動する。そういうことを、この人から学ばないといけないな。そういう勉強にもなるわけです。
ところが人は、孤立して他者との交流をしなくなると、自分のみの生活に埋没してしまうので、こうしたバランス感覚を容易に見失うんですよね。
二律背反するような別の要素を、バランスよく調整して生きる、ということは難しいので、どれか自分が得意なもののみに専念して、そこを集中して鍛える方が楽なので、
そうすると、知に励むタイプは、ひたすら本を読んでよく勉強はするが、知識や教養の量のみに胡坐をかいて知天狗となり、情の深い人や意志力のある人から学ぶこともせず、自分の知にのみに溺れて、情と意が欠落していることに気づかない。
魂のバランスを欠いて、かなりいびつな性格に変貌してしまっている自分の不具合に気づかない。そうして相も変わらず、一つの要素にのみ突っ走って、人生を誤る。
中道の大切さというのは、極端に走ることの危険を避けるために、自分の偏りを悟ってこれを修正すること。上記の例でいえば、知に偏り過ぎている知天狗タイプは、他者との交流を通して、自分には無い情の深いタイプ、感性豊かな人から学んだり、意志が強く、決断力や行動力のある人から学ぼう、という生き方を選ぶことで、自分自身のバランスを取り戻すことが出来るだけでなく、他者を尊重するという気持ちの大切さも、取り戻すことが出来るわけです。
だからいろんなタイプの人とよく付き合うことは、とても大切なんですよね。