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前回、低レベル放射性廃棄物の処理方法が想像以上にずさんであることを説明しました。それでは、使用済み核燃料である高レベル放射性廃棄物はどのような管理をしていくのでしょうか。
原子力発電を実用化する段階から、使用済み核燃料が大変危険な物であることはわかっていました。わかっていながら、その処理方法や技術を確立しないまま走り出してしまった原発は、『トイレの無いマンション』と揶揄されています。排泄物を捨てる場所が無い高級住宅とは、言い得て妙だと思いませんか?
さて、使用済み核燃料とはどのようなものでしょうか。
原子炉に装填する燃料集合体は、ペレット状に焼き固めたウランを特殊合金の筒に詰めた『燃料棒』を束ねた物であることは既に説明しました。
また、ペレット状の燃料は、自然状態では微量であるが核分裂しやすいウラン235を3%程度に濃縮してあり、残りは分裂しにくい238であることも説明済みですね。
実際のところ、濃縮して成分比率を高めたウラン235が全て分裂するわけではありません。使用済み燃料には、1%程度の235の『燃え残り』が含まれます。
残りの99%の大まかな組成は、
①無反応だったウラン238…95%
②ウラン238が中性子を吸収して変化したプルトニウム…0.9%
③ウラン235とプルトニウムが核分裂した結果生成された様々な核種…3%
④ウラン238が中性子を吸収して変化したプルトニウム以外の超ウラン元素…0.1%
となります。
③は、今やすっかり有名になったストロンチウムやセシウム等が含まれます。
④は、ウラン(原子番号92)より原子番号が上で自然には存在しない、つまり原子炉内か実験装置内でしか発生しない物質で、全て放射性です。
これらは非常に不安定なものが多く、常に放射線を放ちながら別の原子核へと変化していきます。このことから、使用済み燃料の組成は刻々と変化していくことになります。
また、原子核が壊変することによって発生する崩壊熱も大きい上に、核種によって半減期がバラバラなため、単純に何年経てば安全と言えない難しさがあります。
では、現在これらの『核のゴミ』はどのように処理されているんでしょうか。
以下の4つの方法が考えられます。
①原発内の貯蔵プールで冷却
②再処理工場で再処理
③高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで保管
④地層処分計画
困ったことに、国内の使用済み核燃料のほとんどは、現在①の状態に置かれています。福島の事故でも貯蔵プール内の使用済み核燃料が問題になっていますね。使用済み核燃料は崩壊熱を出し続けるため、とにかく冷やさなければなりません。このための措置です。
高レベル放射性廃棄物が、原発立地の生活圏内に水に浸されただけの状態で保管されていると言うだけで恐ろしい話しです。
②は六ヶ所村の再処理工場で行われる方法です。
燃料棒をばらし、ウランとプルトニウムを抽出。残りは廃液となります。この廃液に核分裂生成物や超ウラン元素が含まれます。
廃液は高温で溶かしたガラスに混ぜ、金属容器に流し込んで冷却固体化します。これを『ガラス固化体』と呼びます。
この廃液は、ガラス固化体になってもなお壊変による崩壊熱を出し続けるため、冷却のために30~50年間管理する必要があります。これが③です。
ガラス固化体は、一部が東海村の処理施設で、残りはイギリス・フランスで製造されています。
2010年現在、国内で保管されているガラス固化体は、六ヶ所村に1,700本以上、東海村に250本弱です。
また、2010年末までに発生した使用済み核燃料を全て再処理してガラス固化体にすると、24,000本を超える固化体が出来るそうです。固化体1個の重量は500kgです。
2020年までに生み出されるガラス固化体は、約40,000本と言われています。
処理方法や処理施設の確立は待った無しの状態です。
そこで現在進められているのが④です。ガラス固化体を地下300mより深い深地層に埋設してしまおうという計画です。
固化体を炭素綱でできたオーバーパックに入れ、粘土の一種で出来た緩衝材で包み込み、岩盤内に建造した坑道に埋設。最終的に坑道が満杯になったら坑道ごと埋め戻してしまおうという算段です。
前述のとおり、国内の使用済み核燃料のほとんどが①の状態です。
六ヶ所村の再処理工場が本格稼働していない。だから固化体の製造も海外頼み。深地層処理施設も北海道幌延、岐阜県瑞浪に深地層研究センターを建設着工したものの、施設候補地の選定すらままならない状態。つまり、『トイレが無いマンション』な訳です。
現状では、原発施設内にプールを増設したりすることで対応していますが、使用済み核燃料が施設から溢れ出す時期は目の前に迫っています。中間貯蔵施設を建設して、溢れ出した使用済み核燃料をとりあえず保管しようという動きがありますが、残念ながらその実現すら目途が立っていません。
使用前の核燃料内に含まれる放射性物質はウランだけですが、使用済みとなると様々な核分裂生成物や超ウラン元素が含まれます。これらの物質の放射能はどれも強力で、使用前の1億倍に及びます。
ガラス固化体も安定化するまで壊変が続きます。ガラス固化体の放射能が使用前核燃料のレベルまで落ちるには、100万年単位の年月を要します。人類がようやく猿人の時代に別れを告げたのが130万年ほど前と言われています。ガラス固化体が安定したとき、地上に人類はいるんでしょうか? そもそも、固化体が埋められた土地は、当時と変わらぬ状態のままでいてくれるんでしょうか? わずか100年のスパンでも、日本の国土で地震の影響を受けない土地があるとは思えません。
では、どうすれば良いのだ? と腹立ち紛れに推進派の人は言うかも知れません。このまま原発内のプールに置いておけば良いのか?と叫ぶかも知れません。おまえ達こそ将来のことを考えていないと…
でも、そうでしょうか?
そもそも、トイレを作らずに家を建ててしまった人達の間違いなのです。処理の仕方はおろか、処理の場所すら決めずにゴミを出し始めることが認められた事業なんて他にはありません。常識では考えられないことを国ぐるみでやってきたツケが今の状態です。逆ギレされる憶えはありません。
しかし、今も原発は稼働し続け、使用済み核燃料は排出され続けています。人類は一刻も早く原発を廃止し、少なくとも新たに産まれるゴミを無くさなければなりません。
そして、もはや絶望的な量となった使用済み核燃料とともに生きるのを強いられるなら、我々の知恵を結集して100万年の時を超える管理方法を生み出すしかありません。それが人類の未来に対するせめてもの罪滅ぼしになるでしょう。
次回は最終回。
核の無い世界を考えます。
to be conteinue・・・