時は止めることはできません。どんなに今という時に留まりたいと思っても、無情にも時は流れるように進んでゆきます。
そうやって流れてゆく先に待ち構えているものが死です。
だから、生きるとは、死に向かって近づいていることに他なりません。
でも、私たちは驚くほど、自分が死に向かって進んでいると思っていません。たとえ自分が死んでゆかなければならないと分かっていても、それはまだまだ先だと遠くに眺めています。
きっと死について考えたら心が暗くなるからだと思いますが、結局、それも死んで置いてゆかなけれぱならないものばかり求めているからだと思います。
人間、自分が死ぬと思ってないから、死んで置いてゆかなければならないものでも、平気で求めておれます。
そして、死んでゆく時には、自分の人生は何だったのだろうと後悔の涙を流すのです。
でも、死ななくても、死んでゆく時にはすべて置いてゆかなけれぱならないことくらい分かっていたはずです。
それなのに、求めていることは自分が死ぬなんて夢にも思ってないからです。
死を自覚すること。そこから本当の人生が始まります。
死んで何が残るか、死んで何が見えるか。
人生とは死の問題を解決するためにある。
死んで置いてゆくものばかり求めていては幸せにはなれないのですね。