私たちは我が身の死を真面目に考えることはありません。たとえ自分も死んでゆかなければならないのだなあと考えても、でも、まだまだ生きているからと死を先送りにしてしまいます。
じゃあ、生きて何をしているのかと言えば、私たちは時間があれば、食べることやお金のこと、好きな相手のことや誉められることばかり考えています。そして、やることがなくて暇だとじゃあ、寝るかと寝てしまう。
人生とは、食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲の五欲を満たすことで過ぎ去ってしまうのです。
そうやって欲に流れると、一日あってもあっという間、一カ月あってもあっという間、一年あってもあっという間に過ぎてゆきます。
私たちは死ぬのは、まだまだ先だと安心していますが、そうやって安心している間に十年二十年という時間があっという間に過ぎて、死が目の前に迫ってしまうのです。
じゃあ、死の宣告を受けて余命幾ばくもないとなったら、真面目に死のことを考えるのかといったら、死が迫り、不安になればなるほど、私たちは不安を誤魔化す為に五欲を満たすことしか考えなくなります。
あとわずかで死んでしまうのに、この人は何をやっているのだろうと思うことがありますが、人間とは、本当に死ぬまで、自分の死を先送りにし、考えることなく、死んでゆくのです。
だから、死は元気なときに考えなくてはなりません。自分が死ぬとはどういうことか?
それを真剣に考えて、死の準備をしなければならないのです。