『からくさ図書館来客簿;第四集』を読みました。 | shiratsuyuのひとことがたり

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わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人にはつげよ あまの釣舟


百人一首に収められている参議篁(小野篁)の歌ですね。


私はこの歌を、大海原に船を漕ぎ出す勇壮な想いを詠っていると解釈していました。

しかし、解説書を読むと流罪で流刑地隠岐へ船出する際に悲しんで詠ったものとなっていました。

私にはそんな悲壮感は感じられず、百人一首ではこの歌がそして小野篁が好きでした。


その小野篁が主人公なのが今回読みましたこの小説です。


仲町六絵著『からくさ図書館来客簿;第四集』です。

第四集となっています通り第4番目の作品で第十四話~第十八話まで収められています。

私はすでに第三集までは読んでいました。


篁は冥官(閻魔庁に仕える冥府の官吏)で、道なし(善行を積みながら未練に縛られて現世をさまよう霊魂)を見つけ出し天道に送るため、京都北白川に私立図書館を開き、助手に時子(新米冥官でもと内親王・斎院、篁は教育係)を迎え仕事をしています。


いろいろな悩みを持った人間に道なしがとり付き、その人が図書館を利用することで、篁と時子によってその人の悩みは解決し、道なしは天道に行くというのが大まかなあらすじです。

 

この小説には、篁の他に、上官として安倍晴明、同じ冥官として太田道灌・額田王が登場します。

こういう歴史上の人物が現代に登場するというのが面白く私は好きです。


第十四話、第十五話「からくり山鉾 前後編」は祇園祭の山鉾の修理に関する話で、文化財修理について語られます。


修理とは新しく綺麗にすることではなく、現状維持修理が原則だということ、それは大切にされてきた長い時間をも保存しなくてはならないからだそうです。私たちが忘れかけている大切なことを思い出させてくれる考え方ですね。


とてもいいお話で心が温かくなりました。


また篁が時子をおちょくるところもほほえましくほっこりします。


読後は必ず心打たれ優しい気持ちになれる小説で私は大好きです!