そのとき、って つまり、この世からお別れするとき。
自分では着れないから、誰かに頼んでおくか、事前に準備しておくか。
わたしの母は、亡くなったあと、タンスを開けたら、白衣がちゃんと用意してあった。
明治の人だったから、縫物ができた。
自分で縫ったんだな。
それを姉たちが着せて納棺した。
母の往生は、20年ほど前。
死への準備は、よい人生を送ること、とトルストイだったか誰かが言った(ようだ)。
母が良い人生だったかどうか、若干疑問なんだけれど、家族が慌てないような配慮だったと思う。
本当は、葬儀社さんにお任せの方が簡単なんだけど。
自分のそのときに、自分でやれることはやっておこう、という気持ちだったんだろうな。
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従兄弟の亡くなったのは数年前、群馬県だったけれど、地元の葬儀社さんの納棺師さんがやってきて
伝統的というか、昔風というか、手甲・脚絆・白足袋・編み笠・六文銭(印刷)入りの頭陀袋・草履・杖という
まことに、死出の旅そのもののいでたちだった。
「O~ クラッシク」!!!
信州大学の山岳部の山男だったんで、登山靴とかピッケルを入れるのはどうかと提案したら
瞬間的に否定された。
巡礼姿になった従兄弟は、北アルプスを駆けまわっていた雄姿からは程遠く、これじゃ
冬山登山は無理だな、と思った。
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梅窓院はかなりの数の葬儀があります。
寺の施設内で行うときと、どこかの斎場でのときといろいろ。
葬儀式の前に、棺の蓋を開けていただいてかならず、ご挨拶をすることにしている。
最近は、あの、白装束以外の生前のお気に入りの装いをされている方も多い。
スーツ、ドレス。
ハワイがお好きだった方は、アロハ。
フラダンスをされていた年配女性は、フラのドレスにレイをかけていらっしゃった。
まことに、花の中にうずもれてこれからも踊り続けられるかのようでした。
さて、自分はどうしようかな。
一応、坊さんだから、衣(ころも)に袈裟か。
数珠なんかも今つかっているやつ。
でも、本当のところ、一番、着心地がいい ユニクロのフード付きパーカーがいいと思っている。
季節が寒い時だったら、ヒートテックタイツは絶対必要。
なんて考えていたら、そんな必要はなさそう。
残った家族の誰かが、勝手に決めちゃう話。
葬儀社さんに、「一番安いコースでお願い」っていう事になる。
ということで、ユニクロでこだわりたいなら、遺言しとくしかない。
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ところで、旅立ちの装備なんか考えること、意味なしですかね。